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メタボロミクスインサイト

肥満に伴う肝臓がんの発症率上昇に関与する代謝物質とは?

2013年08月05日
医学分野
背景

肥満は世界レベルで蔓延しており、この流行は今後も止まらないと考えられています。肥満に伴い、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患等の様々な疾患の発症リスクが高まることが知られています。

また、肥満によって大腸がん、膵臓がん、肝臓がんのリスクが高まることも報告されています。しかしながら、肥満とがんの関連性に関してはこれまで仮説にとどまっており、論文レベルの報告はほとんどありませんでした。

概要

今回ご紹介する論文では、肥満と発がんリスク因子から、肝臓がん発症率の上昇までの道筋を、細胞老化及びそれに伴う細胞老化関連分泌因子の分泌というイベントを介して、豊富な実験データにより明らかにしています。この論文を読むことにより、それぞれの事象について二重、三重に実験データを積み上げて、肥満と肝臓がんの関連性を明らかにしていることが理解できます。

その一つとして、肥満と細胞老化をつなぐ鍵となる因子として二次胆汁酸という代謝産物を発見しています。LC-MS解析により、普通食と高脂肪食を与えたマウスの血清中の代謝物質プロファイルを調べ、二次胆汁酸の一つであるデオキシコール酸のレベルが変動していることを同定したことが発端です。

デオキシコール酸は、腸内細菌によって一次胆汁酸から生成される代謝物質で、活性酸素生成を介してDNAにダメージを与え、細胞老化を引き起こすことが知られています。これらの知見から、肥満により腸内細菌が二次胆汁酸を生成することで細胞老化を促進し、細胞老化関連分泌因子により肝臓がんが発症するメカニズムが考えられます。

本論文では、二次胆汁酸を生成する腸内細菌に作用する抗生物質の投与、高脂肪食だけではなく遺伝的に肥満であるマウスを用いた解析、デオキシコール酸含有食を与えることによる実験データの蓄積等により、上記メカニズムの一端を証明しています。

まとめ

今後、肥満はさらに蔓延することが容易に予測され、肥満に伴う疾患のリスクは増加の一途を辿ることになります。肥満を発端とする疾患を予防することができれば、医療費削減に大きく貢献することができます。

これらの疾患の一つとして肝臓がんがあり、今回ご紹介した論文では、肥満に伴う肝臓がんの発症メカニズムが解明されました。

今回明らかになった知見から、仮に肥満になったとしても、何かしらの方法により二次胆汁酸であるデオキシコール酸の蓄積を防ぐことができれば、肝臓がんのリスクを低下させることができると考えられます。

本論文では、デオキシコール酸が重要な鍵となる代謝物質であることが、HMTのLC-MSを用いたメタボローム解析から明らかになっています。メタボローム解析の貢献が、肥満に伴う肝臓がんのリスク低減の一助を担えたらと願っています。

Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer through senescence secretome.
Yoshimoto S, Loo TM, Atarashi K, Kanda H, Sato S, Oyadomari S, Iwakura Y, Oshima K, Morita H, Hattori M, Honda K, Ishikawa Y, Hara E, Ohtani N. Nature., 499(7456): 97-101 , 2013

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