論文紹介
植物分野
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NADP(H)プールが代謝や光合成に及ぼす効果のメタボローム解析
Plant Physiol.

2010-05-27 · 10:00 @ admin  - 

植物では、細胞質内の還元力が必要とされる代謝反応に還元剤としてNADHが用いられるのに対して、葉緑体内の代謝反応にはNADPHが用いられています。

光合成電子伝達により電子を受け取ることによって、NADPからNADPHに変換され、生成されたNADPHは還元的ペントースリン酸経路、窒素同化だけでなく、活性酸素の消去系においても重要な役割を果たしています。

以前の研究において、NADからNADPを生成するNADキナーゼを過剰発現させたシロイヌナズナでは、メタボローム解析により、NADP(H)の量が増加し、結果として炭素及び窒素代謝物が増加していることが分かりました。しかしながら、光合成活性のパラメーターの1つである二酸化炭素固定速度の増加は見られなかった。


概要

NADP(H)のプールの増大の効果は、強光環境で生育しているイネの方が顕著であると予想し、シロイヌナズナNADキナーゼ遺伝子を過剰発現させたイネ(NK2)を用いて、メタボローム解析を行なった。

NK2イネでは、NADP、NADPH共に増加していて、NADP(H)プールは増大していることを最初に確認した。

NK2イネでは、アミノ酸の多くは増加したが、有機酸類の増加は見られなかった。糖リン酸の中では、リブロース1,6-二リン酸のみが増加した。二酸化炭素を固定する還元的ペントースリン酸経路で、リブロース1,6-二リン酸の量は二酸化炭素の固定速度に大きな影響を与えており、この代謝物の増加は二酸化炭素固定が活性化している可能性を示唆している。

二酸化炭素のガス交換を測定することによって、二酸化炭素固定速度を調べると、NK2イネで固定速度の増加が見られた。

NADP(H)プールは、活性酸素消去系にも影響を与えているので、活性酸素生成を誘導するメチルビオロゲン処理をし、酸化ストレスに対する植物体のダメージを調べた。NK2イネはコントロールと比較して、ダメージが少なく、酸化ストレス耐性が高かった。

結論

NADP(H)プールを増大させたイネでは、アミノ酸およびリブロース1,6-二リン酸の量が増加することによって二酸化炭素固定速度が高まり、また酸化ストレス耐性が向上した。二酸化炭素固定速度の上昇や酸化ストレス耐性の獲得は、シロイヌナズナでは観察されてなく、強光に適応したイネ特有の現象であった。

応用面を考えると、NADP(H)のプールの増大がイネの収量および生育にどのような効果を及ぼすかが気になりますが、本論文では議論されていませんでした。おそらくポジティブな効果が見られなかったのではないかと推測することができます。

本論文では、43代謝物のデータが得られていますが、HMTに受託解析をお願いしていただければ、100~200の代謝物質のデータを得ることができ、より包括的な解釈を行なうことができます。

Takahara K, Kasajima I, Takahashi H, Hashida SN, Itami T, Onodera H, Toki S, Yanagisawa S, Kawai-Yamada M, Uchimiya H.
Metabolome and Photochemical Analysis of Rice Plants Overexpressing Arabidopsis NAD Kinase Gene.
Plant Physiol. 152(4) 1863-73, 2010
PubMed