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ABC's of Metabolomics

【第1回植物とメタボロミクス】植物メタボロームの多様性


バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。これから1年間、植物メタボロームの紹介をしていきますので、よろしくお願いします。

ヒトでは、遺伝子数が約22000あるのに対して、代謝物質の数は約3000で、遺伝子と比べて対象とする数が少ないため、細胞内事象を理解するための解析がしやすいことがメタボローム研究の利点の1つと考えられています。

植物メタボロームでは、逆に代謝物質が約20万種類近くあると推定され、多様性に富んでいることが特徴の1つであると考えられています。

植物が持っている代謝物質は非常に多様性に富んでいて、植物の生長に重要なだけでなく、環境変化や害虫などの外敵からの保護などに重要な働きを担っている物質も存在しています。また、ヒトの健康促進に必要な物質(ビタミンなど)、あるいは抗癌作用などの薬効を示す物質も植物に含まれています。例えば、抗癌作用を示す物質だけでも、アントシアニン、アルカロイド、グルコシノレートなど非常に多くの物質が知られています。アメリカ国立癌研究所では、グルコシノレートを多く含むアブラナ科の野菜を癌予防食品として認めているように、植物に薬効を持つ物質が含まれていることは広く認知されています。

我々はまだ植物に含まれる全ての物質を同定しているわけではありません。現在同定できていない物質群の中にも、非常に有用な物質が残されている可能性が高いと考えられています。有用物質の探索、さらに有用物質を高生産する植物の開発はまだまだ長い道のりですが、まずは、未同定の物質を1つ1つ明らかにしていくところからはじめていき、次に目的の代謝物の生合成経路を明らかにし、最後にその生合成経路を調節しているメカニズムを解明することが植物メタボロームの重要な課題となっています。

今後、植物メタボロームの研究が発展して、植物体内の代謝システムを明らかにすることができれば、健康促進や病気の治癒に効果を示す有用な物質を大量に持つ植物を開発できるのではないかと考えられます。メタボロミクスだけでなく、トランスクリプトミクス、ゲノミクス、プロテオミクスを組み合わせることが、上記の課題を解決するための強力なツールとなり得ます。

将来、食べるだけで癌の発生率を減少させることができる、人間の生存に必要な大部分の栄養素を摂取できる植物の開発を夢見て、植物メタボロームの研究に没頭する研究者が増えることが望まれています。

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メタボロ太郎なう

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