研究者の方へ

研究者の方へ

CONTENTS

メタボロミクスインサイト

活性酸素蓄積に伴うインスリン抵抗性獲得メカニズム

2010年12月08日
医学分野

若年者と比較して、高齢者ではミトコンドリアの酸化的リン酸化活性が低下し、筋肉細胞内の脂質量が増加し、インスリン抵抗性が高くなると報告されています。この結果から、ミトコンドリア活性の低下に伴い、筋肉中の脂肪レベルが増加し、結果としてインスリン抵抗性になるという因果関係の仮説が提唱されていますが、詳細については明確になっていません。

概要

老化に伴うミトコンドリア活性酸素の増加とインスリン抵抗性を調べるために、ミトコンドリアのカタラーゼを過剰発現させたMCATマウスを作製し、詳細な解析を行った。

若年時・老化時ともに、コントロールマウスと比較してMCATマウスでは、発生する過酸化水素量は低下していた。それゆえ、酸化ストレスに伴うミトコンドリアDNAのダメージ、タンパク質のカルボニル化の増大がコントロールマウスの老化時で認められた。これらの増大は、MCATマウスの老化時で見られなかった。ミトコンドリアにおける酸素消費、ATP活性、酸素消費、二酸化炭素産生の低下についても老化時のコントロールマウスで認められた。これらの低下は、MCATマウスの老化時で見られなかった。これらの結果は、老化による活性酸素量の増加に伴いミトコンドリアの機能は低下するが、カタラーゼの過剰発現によって活性酸素を消去するとミトコンドリアの機能が維持されることを示している。

グルコースクランプ法によってインスリン抵抗性を調べた結果、必要グルコース注入量はコントロールマウスの老化時で顕著に低下していた。この結果は、コントロールマウスの老化時でインスリン抵抗性が高くなるが、MCATマウスの老化時ではインスリン抵抗性が高くならないことを示している。

コントロールマウスの老化時では、ジアシルグリセロールレベルおよび膜におけるPKCθレベルの増加、AKT2のリン酸化の低下が見られた。これらの増加は、MCATマウスの老化時では観察されなかった。ジアシルグリセロールの増加は、PKCθを活性化し、インスリンシグナルを阻害することが知られており、コントロールマウスの老化時でこの現象が起きていると考えられる。

ミトコンドリア生合成の指標になるAMPKのリン酸化について調べた。コントロールマウスの老化時でAMPKのリン酸化の著しい低下が認められた。また、ミトコンドリアの細胞内密度の低下も見られた。

結論

ミトコンドリアにおいて、老化に伴う活性酸素の蓄積により、ミトコンドリア機能および生合成の低下が引き起こされ、ジアシルグリセロールレベルの上昇、PKCθの活性化によってインスリン抵抗性になると考えられる。

本研究では、ミトコンドリアの酸化ストレスを抑制することが、インスリン抵抗性を引き起こさないための予防ターゲットとしての可能性を示しています。

Targeted expression of catalase to mitochondria prevents age-associated reductions in mitochondrial function and insulin resistance.
Lee HY, Choi CS, Birkenfeld AL, Alves TC, Jornayvaz FR, Jurczak MJ, Zhang D, Woo DK, Shadel GS, Ladiges W, Rabinovitch PS, Santos JH, Petersen KF, Samuel VT, Shulman GI. Cell Metab., 12(6):668-74, 2010

PubMed Journal Website

一覧へ戻る