第11回日本ゲノム微生物学会

HMTは神奈川県で開催される第11回日本ゲノム微生物学会てランチョンセミナーを行います

 

  会期   3月2日(木)~4日(土)
  会場  慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス
  住所   〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322

 

ランチョンセミナー

日時 2017年3月4日(土)

参加費無料(お弁当付)

「枯草菌における二次代謝産物NTDの過剰生産が及ぼす中心代謝への影響

 演者 稲岡 隆史先生 (国立研究開発法人 農業•食品産業技術総合研究機構 食品研究部門)

枯草菌は複数の二次代謝産物を生産することが知られている。ネオトレハロサジアミン(NTD)は枯草菌を含む数種のBacillus属細菌が生産する二次代謝産物であり、その生合成遺伝子(ntdABC)の発現は、NTDを介した自己誘導(オートインダクション)による正の制御と、グルコーストランスポーターGlcPによるグルコース取り込みと連動した負の制御を受けている(1-3)。我々はNTDの制御機構を解析する過程で、GlcPの破壊によって起こるNTD過剰生産がグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(Zwf)変異株の増殖能を回復することを発見した。Zwfはペントースリン酸経路の最初の酵素であり、NADPH合成に重要であることから、NTD合成経路とエネルギー代謝との関連性が示唆される。そこで、メタボローム解析を利用して、NTD過剰生産による中心代謝経路への影響とzwf変異株の増殖能との関連を調査した。

メタボローム解析の結果、zwf破壊株では、予想通り、ペントースリン酸経路の代謝産物やNADPH量が顕著に低下していた。一方、増殖が回復したzwf glcP株ではペントースリン酸経路の代謝産物は低下したままであったが、TCAサイクルの代謝産物が顕著に増加しており、細胞内NADPH量も野生株レベルに回復していることがわかった。このような代謝産物の変化は、NTD生合成遺伝子を破壊したzwf ntdABC glcP株では観察されなかったことから、これらがNTD過剰生産によって引き起こされたものであると考えられる。これらの結果から、glcP遺伝子破壊によるzwf破壊株の増殖回復効果は、NTD合成を活性化することによりTCAサイクルの代謝中間体が蓄積し、リンゴ酸からピルビン酸への変換に伴って細胞内NADPH量が増加したことに起因しているものと考えられる。そこで、zwf株の増殖におけるリンゴ酸の効果を検討した結果、リンゴ酸の添加によりzwf株の増殖が回復することがわかった。このように、メタボローム解析では予期せぬ代謝経路への繋がりを発見することができ、微生物研究においてもパワフルなツールとして有用である。

 

学会の詳細は第11回日本ゲノム微生物学会年会ウェブサイトをご覧ください。

 

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