進化するメタボロミクス

メタボロミクスが興ってから10年以上を経て、メタボロミクスと銘打った論文だけでも年々増加し、2013年には1000報近くが発表されました。代謝に言及した論文にいたっては爆発的に増加しており、応用分野も広がりを見せています。

そこで本セミナーではバイオ医薬品開発における抗体生産と、がん研究にメタボロミクスを採り入れられている先生方をお招きし、最新の研究例をご紹介いただきます。

日程・場所

場所 日時 定員
品川(東京) 5月30日(金)
13:40~16:20(受付開始13:20~)
80名

開催概要

参加費
無料(あらかじめ参加申込みをお願いします)
主催
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
お問い合わせ
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
営業・マーケティング部 井元淳
☎ 03-3551-2180
お申込
こちらからお申し込みください

プログラム

13:40~13:45 ごあいさつ
13:45~14:30 癌を非癌状態へ変化させるマイクロRNA

鳥取大学医学部 病態解析医学講座
准教授 三浦 典正先生

14:30~15:15 創薬研究におけるメタボロミクスの進展

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
研究開発本部 研究員 紙 健次郎 大賀拓史 (演者が変更になりました)

15:15~15:35 コーヒーブレイク
15:35~16:20 動物細胞を用いたバイオ医薬品生産ー代謝解析の観点から

徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部
教授 大政 健史先生

プログラムは予告なく変更することがあります。変更した場合は当ウェブサイトおよびご登録いただいたアドレスまでご連絡いたします。

会場

日時
5月30日(金)13:40-16:20 (受付開始13:20~)
会場
AP品川 10F A+B
住所
〒108-0074 東京都港区高輪3-25-23 京急第2ビル
アクセス
JR・京急 品川駅高輪口徒歩約3分
AP品川 アクセスマップ

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定員
80名

 

セミナーお申込システムについて

セミナーのお申込みは こちらからお願いいたします。

 

講演要旨

癌を非癌状態へ変化させるマイクロRNA

三浦 典正先生

鳥取大学 医学部 病態解析医学講座 薬物治療学分野 准教授

我々は死因の50%が癌となる時代に突入しようとしている。抗癌薬開発の歴史は、癌細胞を殺傷するか癌増殖抑制を導く機序の従来からの抗腫瘍成分に加えて、近年では分子標的医薬が開発され、正常細胞に相当優しい抗体医薬の開発へと方向性がシフトしている段階にある。このような抗体医薬も使用初期には有効であるが、徐々に効果が弱まり、癌特異的といえども限られた作用点を抑制する薬理作用の限界に直面している。今後の抗悪性腫瘍薬に必要な作用機序として、1)多くの代替パスウェイをブロックできるもの、2) 同時に癌抑制遺伝子を高発現できるもの、3) 細胞自体を別の悪性でない細胞群へ形質転換できるもの、などが重要な条件であると我々は考えている。アルゴリズム上100以上の遺伝子を標的とする小さなRNA群は上記の条件を満たす可能性を有しており、その意味で核酸医薬(RNA医薬)は、最適なドラッグデリバリー(DDS)キャリアー(生体親和担体)が開発されることで有望な生体分子となり得る。我々は以前より癌の老化誘導を目指して、hTERTを制御できる癌制御遺伝子群を探索し、クローニングしてきたが、それらの機能解析に携わる過程で、12種類のマイクロRNAの有意な変化を観察し得た。その一つにhsa-miR-520dがあり、本講演ではその機能と未分化な癌種に対する有効性が期待できることを紹介する。

我々は、ヒトmiR-520dを用いて、正常細胞由来ヒト細胞株からOct4, Nanog強陽性の多能性未分化細胞を高率に作製できたことを受け、特に治療抵抗性の悪性度の高い癌組織由来ヒト細胞株で同様の現象誘導を明らかにし、in vivo検討で 著明な転移抑制の誘導を確認した。高転移性癌細胞株の転移をほぼ完全に抑制でき、miR-520dのウイルスベクター導入によりOct4とP53共に高発現の細胞を誘導していることを確認できた。HLF細胞(肝癌未分化細胞株)への導入細胞(N>100)の免疫不全マウスへのxenograftモデルで、6%に奇形腫形成及び7%に正常肝組織への変化、87%に癌腫非形成を確認してきた (Scientific Reports, 2014)。また肝癌細胞HLFからin vitroでSPP1、IBSP陽性の骨芽細胞への分化誘導も確認した。奇形腫や肝組織を癌細胞から作製し得たことは、幹性誘導化を通して癌細胞も正常細胞になり得ることを現象として発見したことになる。新規のメカニズムに基づく抗癌薬の可能性が示唆されたため、その後メカニズム解明に着手した。

高分化型肝癌では未分化型肝癌と比較して腫瘍非形成に至るまで2倍以上誘導時間を要すること、またメタボローム解析やメチレーションレベル解析の結果、脱分化誘導の原因として、脱メチル化誘導、生化学物質のサイレンシング誘導、細胞群がアポトーシスに因らず異なる細胞群に変化することなどが示唆された。当該RNA分子が、癌(幹)細胞と正常(幹)細胞の同質性及び異質性を決定する候補因子であり、in vivo応用に資する製剤化を実現できれば、実用可能な生理的分子となり得る。

これらの結果は、正常細胞化または良性化が現実に可能であり、癌が正常な幹性細胞状態と相互にリンクしていることが強く示唆され、特にmiR-520d-5pは、未分化癌を発生由来細胞へ回帰させ、悪性形質を喪失させる特徴を持ち、癌細胞に確実に導入させることができれば、癌幹細胞状態を超えて脱分化し、派生元の正常細胞へ形質転換する、そのような画期的な生体分子となる可能性を秘めている。

創薬研究におけるメタボロミクスの進展

大賀 拓史

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

― メタボロミクスは信頼できる研究ツールたり得るのか?―

この疑問を解消していただくには、何よりもその実績をご覧いただくことが必要であろう。

弊社は年間350件以上の解析試験を通じて、様々な研究分野におけるメタボロミクスの導入を支援してきた。近年では基礎的な生化学研究に留まらず、がん研究や再生医療などの先端分野で、またバイオプロセシングや品質管理などの幅広い分野で、メタボロミクスを活用した研究成果が生まれつつある。

本講では、弊社が提供するメタボロミクスの概要・性能の現状と共に、その実績として昨年度に発表された幾つかの文献をレビューさせていただく。また、特に創薬を指向した事例として下記2テーマを取り上げ、得られたデータとその活用について論じたい。

・事例1.MEK阻害剤によるがん細胞の中心代謝応答
MAPK/ERK kinase (MEK)は、細胞外からの刺激に応じて転写を制御する主要なシグナル経路因子の一つである。我々は、高感度分析プラットフォームにより、立体培養がん細胞にMEK阻害剤による広範なエネルギー代謝の変化を捉えた。

・事例2.抗がん剤治療における血中マーカーに基づく患者層別化の試み
漢方成分であるアルクチゲニンは、in vitro及び動物モデルにおいて抗腫瘍作用が確認され、現在臨床研究が進められている。我々は、血中代謝プロファイルの経時的な変化から患者層別化に寄与するマーカー候補を抽出し、その有効性を検討している。

動物細胞を用いたバイオ医薬品生産~代謝解析の観点から~

大政 健史先生

徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 教授
大阪大学大学院工学研究科 招へい教授
次世代バイオ医薬品製造技術研究組合

抗体医薬に代表されるようにバイオ医薬品は、近年の製薬産業の成長エンジンとなっている。これらのバイオ医薬品の生産は、基本的は生物を用いたものつくりプロセスであり、遺伝子組換え等の手法を用いた組換え細胞を用いた物質生産が主流となっている。バイオ医薬品生産に用いられる宿主細胞としては微生物、特に大腸菌が最もよく用いられているが、抗体に代表される糖蛋白質のように構造が大きく複雑なものには、動物培養細胞が宿主細胞として用いられている。中でもChinese Hamster Ovary(チャイニーズハムスター卵巣)(CHO)細胞はこれらのバイオ医薬品の宿主細胞として最も汎用されている細胞であり、CHO細胞をベースとした様々な技術開発がなされている。

一般的に動物細胞を用いた物質生産においては、エネルギー源としてグルコースとグルタミンの両方が用いられている。本講演においては、動物細胞培養における現状について紹介し、各種エネルギー源の抗体生産における影響ならびに、代謝工学的手法に用いた解析やアプローチについて紹介したい。

 

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