食品機能性研究におけるメタボロミクスの有用性

東京会場の詳細を公開しました(8/11)→セミナー「食品機能性研究におけるメタボロミクスの有用性」(東京)
10月10日(金)に東京で同テーマのセミナーを開催いたします。詳細の公開まで少々お待ち下さいますようお願いいたします。(8/3)

表現型に最も近い代謝の解析は、周囲の環境などによって変化する生体の「現在」の状態をよりよく表すと言われています。特に食品機能性研究においては、食品そのものや食品が生体に与える影響など様々な用途でメタボロミクスが利用されるようになってきました。

本セミナーでは食品機能性研究にメタボロミクスを採り入れられている先生方をお招きし、最新のメタボローム研究例をご紹介いただきます。

日程・場所

場所 日時 定員
梅田(大阪) 8月28日(木)
13:40~16:20(受付開始13:20~)
48名

開催概要

参加費
無料(あらかじめ参加申込みをお願いします)
主催
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
お問い合わせ
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
営業・マーケティング部 井元淳
☎ 03-3551-2180

プログラム

13:40~13:45 ごあいさつ
13:45~14:30 腸内細菌研究へのメタボロミクスの応用

協同乳業株式会社 主任研究員 松本光晴先生

14:30~15:15 食品分野におけるメタロボミクスの導入と活用

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
東條繁郎

15:15~15:35 コーヒーブレイク
15:35~16:20 メタボロミクスの食品品質予測への応用

大阪大学大学院工学研究科
教授 福崎 英一郎先生

プログラムは予告なく変更することがあります。変更した場合は当ウェブサイトおよびご登録いただいたアドレスまでご連絡いたします。

会場

日時
8月28日(木)13:40-16:20 (受付開始13:20~)
会場
AP大阪 梅田茶屋町 G
住所
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町1番27号 ABC-MART梅田ビル8F
アクセス
JR大阪駅、地下鉄御堂筋線梅田駅3分(地下街経由直結)
阪急梅田駅1分
定員
48名

講演要旨

腸内環境研究へのメタボロームの利用

松本光晴

協同乳業株式会社 研究所 技術開発グループ
機能性食品の開発やメカニズム解明に腸内環境の研究は必要不可欠である。腸内菌叢の研究は、培養法から16SrRNA遺伝子を用いた系統分類学的解析に移行し、その構造的複雑性(難培養性細菌の存在と個体差)が明確になり、結果解釈をより困難な状況にしている。一方で、メタゲノム解析は、遺伝子情報の組成や機能を解析することが可能になり腸内常在菌の役割解明に大きく貢献しているが、全ゲノム情報が得られない難培養性細菌の存在を含めた解釈は不可能で課題は多い。これらの背景より、演者らは健康と腸内環境の関連性を研究する場合、腸内細菌の代謝産物の方が菌種構成より直接的で重要であると考え、代謝産物に着目し研究を進めてきた。

2010年時点で、腸内環境をターゲットとしたメタボロミクス解析は、NMR、GC-MSおよびLC-MSを用いた研究は幾つか存在していたが、一部の代謝産物に焦点を当てた内容であり、全貌解明という視点からは不十分であった。また、これらの報告は菌体も破壊した抽出物を用いており、腸管内に存在し遊離している代謝産物とは言えないものであった。そこで演者らは、CE-TOFMSを用いて、同腹マウスから無菌(GF)マウスと通常菌叢定着(Ex-GF)マウスを作製し、水溶性・イオン性の低分子代謝産物を広範囲に調べた。結腸内容物より179 成分が検出され、その内約120成分が腸内細菌の影響を受けていることが明らかになった。また、上記GFマウスおよびEx-GFマウスの大脳皮質および血液もCE-TOFMSメタボロミクス解析し、腸内細菌が全身の低分子代謝物にも影響していることを確認した。

筆者らは腸内細菌が産生する生理活性物質ポリアミンを大腸内で増強させる食品の開発にもCE-TOFMSメタボロミクスを利用した。具体的には、統一食事を摂取したヒトの糞便を解析することで、腸管内に存在するポリアミン増強物質の探索を行ない、培養試験によるスクリーニングを経て、最終的にはマウス経口投与試験で生体内ポリアミン濃度を高めることに成功した。本発表では、ヒト糞便を用いたメタボロミクス解析の課題等、論文上には書かれることがない苦労話についても紹介する。

食品分野におけるメタロボミクスの導入と活用

東條繁郎

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
当社は年間350件以上の解析試験を通じて、様々な研究分野におけるメタボロミクスの導入を支援してきました。近年では、生化学の基礎研究だけではなく、食品分野・品質管理など幅広い分野でメタロボミクスを利用した研究成果が発表されています。本講では、当社が提供するメタロボミクスの概要・性能の現状と共にいつかの事例を紹介し、ご意見をいただければと考えております。

前半は、導入方法を中心にどのような資料が測れるのか、どんな成分が対象なのか、どんな前処理をすればいいのか、どんな結果が出るのか等、試験前に直面する疑問についてお答えいたします。

後半は、当社で実施したメタボローム解析事例ほか、最新のフードメタボロミクスの研究例についてご紹介いたします。

メタボロミクスの食品品質予測への応用

福崎 英一郎先生

大阪大学大学院工学研究科
生命先端工学専攻 教授

近年,これまで日本を支えた基幹産業の競争力低下,ならびに,TPPをはじめとする日本を取り巻く周囲の環境の劇的変化により,食品産業への期待が増大している.日本の食品の高い品質は世界的にも知られているが,輸出産業として安定に利益を得るためには,食品製造工程のみならず,食品原料選別,完成製品の保管流通工程のさらなる最適化(コストダウンを含む)が必要となる.メタボロミクスは当該問題解決のための鍵技術となりうる.

網羅的代謝物解析に基づくメタボロミクスは,ゲノム情報実行の結果である.ゲノム情報実行過程におけるメディアの流れを表すオーム情報(トランスクリプトーム,プロテオ-ム)の下流に位置するオーム情報として,機能ゲノミクスの重要アイテムとして期待されていることは言うまでもない.加えてメタボローム情報を精密表現型と考える種々の運用(バイオマーカー探索等)も検討されている.メタボロミクスの技術は食品そのものに対しても適用可能である.その場合,食品中の成分を網羅的に定量分析し化合物プロファイル情報を得るとともに,食品の定量的機能評価値を観測し,両者の相関関係を解析することにより,食品機能を定量的に予測することが可能になるとともに,機能発現に関与する化合物情報の断片を得ることができる.これは,食品に含まれる化合物プロファイルを説明変数としたケモメトリクス研究と考えることができる.化合物分析に質量分析を用いることにより,単なるフィンガープリンティングではなく,化合物情報に基づく高度な考察が可能となる.本セミナーでは,種々の醗酵食品,生薬等を例にとりメタボロミクスの運用による食品品質予測への応用を紹介するとともに,メタボロミクス技術の可能性について論じたい.

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