メタボロミクスがつなぐ腸内細菌のクロストーク

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日程・場所

場所 日時 定員
京都 10月30日(金)
14:40~17:20(受付開始14:30~)
50名

プログラム

14:40~14:45 ごあいさつ
14:45~15:30 わが国の大腸がんの現状と撲滅に向けた取り組み:リキッドバイオプシーの現状
京都府立医科大学大学院消化器内科学
准教授 内藤 裕二先生
15:30~16:15 メタボロミクスから分かる生体に共生する腸内細菌の環境づくり
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
姜 文一
16:15~16:35 コーヒーブレイク
16:35~17:20 腸内細菌と多発性硬化症. 多発性硬化症増加の原因に挑む
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 免疫研究部 部長 山村 隆先生

プログラムは予告なく変更することがあります。変更した場合は当ウェブサイトおよびご登録いただいたアドレスまでご連絡いたします。

概要

日時 10月30日(金)14:40-17:20 (受付開始14:30~)
会場 長谷ビル貸会議室 B室
住所 〒600-8413 京都市下京区烏丸通り仏光寺下ル大政所町680-1 第八長谷ビル8階
アクセス 京都市営地下鉄四条駅6番出口徒歩1分
アクセスマップ(印刷用)
定員 50名
参加費 無料(事前登録をお願いします)

講演要旨

わが国の大腸がんの現状と撲滅に向けた取り組み:リキッドバイオプシーの現状

内藤 裕二
京都府立医科大学附属病院内視鏡・超音波診療部
京都府立医科大学大学院消化器内科学

日本における大腸がんは危機的状況と言えるかもしれません。2012年、がんで死亡された人の臓器別の順位は、男性は肺がん、胃がん、大腸がんの順で、女性は大腸がん、胃がん、肺がん順になっています。大腸がんは頻度が増えているだけでなく、若年齢層で増加していることも大きな問題点です。大腸がんがこのような状況になることは10年前には予想されたわけですが、効果的な対策を講じることが出来ていません。幸いにも大腸がんの手術症例の予後は比較的良好ですし、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの技術も進歩しているため、早期発見の意義は極めて大きいとされています。ESD患者さんの中には、治療した場所と異なる場所に新たに異時性大腸がんが見つかる頻度が高く、1年毎の内視鏡検査が必要です。大きな課題は、そのような症例をどのようにして発見するのかという点です。「大腸がん検診ガイドライン」では、大腸がんを早期に発見する取り組みとして「免疫学的便潜血反応」が推奨グレードAで示されています。実際には便潜血反応を利用している人数は検診が必要な対象の20%以下であり、上手く機能しているとは言えません。血液バイオマーカーによる絞り込みが期待されているものの、臨床に応用されたものはありません。病院の外来などで測定される腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9などは早期発見に有用ではありません。しかし、血液検査によるがん診断、あるいは高リスク群の絞り込みは国民の期待も大きく、早急な研究が必要です。21世紀になりタンパク質を測定する質量分析計の応用により、いくつかのがんバイオマーカーが報告されました。しかしながら、これまでそのバイオマーカーの大規模臨床試験は成功していません。幸いにも、この2~3年の間に、質量分析計を用いた微量定量測定技術が進歩し、いよいよ血液による大腸がん診断も臨床応用が期待できる時代になりつつあります。大腸がんの早期発見に向けた血液を用いた診断、いわゆる「リキッドバイオプシー」の現状についてメタボローム、ペプチドーム、胆汁酸プロファイル測定について、当施設での成績を含めて紹介したいと思います。

メタボロミクスから分かる生体に共生する腸内細菌の環境づくり

姜 文一
研究員 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

ヒトの代謝解析に腸内細菌が注目されている理由は、腸内細菌の多様性にある。ヒトゲノムの中でたんぱく質をコードしている遺伝子の数は約2万超と言われているが、宿主の生体内に存在する微生物が作るたんぱく質をコードする遺伝子の数はそれを遥かに越える800万である。また、身体を構成する細胞の数ですら体内の微生物のほうが圧倒的に多い。

宿主の代謝変化も、栄養や環境に刺激された宿主だけではなく、共存する微生物群による影響でもあることが知られており、様々な代謝作用や疾患発病などに微生物群が関与している可能性も高いと考えられる。ヒトの正常微生物群の多様性において、ヒト間の類似性は10%に過ぎないことから、同じ性別、人種、年齢のヒトにおいても代謝活性はその微生物群により、また置かれた環境により、大きく左右されると考えられる。最近では腸内だけではなく様々な身体部位においても代謝物質の変化に微生物群の関与が知られおり、生体に存在する微生物群による影響に対する新たな研究が存在感を増やしている。

これらの研究には適切な代謝物質の解析が重要であり、メタボロミクスが宿主と腸内細菌による相互作用の究明に大きく貢献できると考えられる。セミナーではこれらの究明の例を紹介する。

腸内細菌と多発性硬化症. 多発性硬化症増加の原因に挑む

山村 隆
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部

多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)は視力低下、手足の筋力の低下、高次脳機能障害などの症状を示す神経難病で、現在では自己免疫疾患であることが定説になっている。MSはかつて日本には存在しないと言われた時代もあったが、この30年で患者数は10倍以上に増加し、現在では18,000人程度の患者数が推定されている。このような増加傾向は、アレルギー疾患、炎症性腸疾患などでも見られ、現代病の本質が関わっている可能性がある。
MSの増加の原因として、我々は海外での発症例や渡航歴の多い若いインテリの発症を経験するにつれ、生活習慣の欧米化による日本人の体質の変化が関与する可能性を考えてきた。動物実験でも、抗生物質投与による腸内細菌叢の偏倚によって、MSの動物モデルの麻痺症状が軽快することが確認され、腸内細菌と自己免疫疾患MSの関係について、内外の研究者が強い関心を持っている。
我々は最近、服部正平教授と共同で日本人MS患者の糞便ゲノムを解析することによって、MS患者で腸内細菌叢の有意な構造異常が存在することを確認した(PLOS ONE 2015)。またMS糞便で増加している細菌種2種と減少している細菌種19種を同定した。減少している細菌の多くはクロストリジウム属に属し、そのなかにはFaecalibacterium prausnitziiのように、抗炎症機能を発揮し、活動性のあるCrohn病で減少しているものも含まれていた。現代社会で増加しつつある、免疫・アレルギー疾患、神経・精神疾患などの根本的な予防や治療にむけて、腸内細菌叢や腸内環境の解析は今後ますます重要になってくるであろう。

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