全国初の“統合オミクス”による解析技術のプラットホームを整備-がんの早期発見技術の開発に着手-

静岡県立静岡がんセンター
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

静岡県立静岡がんセンター(総長:山口建、以下静岡がんセンター)とヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(代表取締役社長:菅野隆二、以下HMT)はメタボロミクス、プロテオミクス、トランスクリプトミクス、ゲノミクスの4つの解析方法を統合した“統合オミクス”のプラットホームを静岡がんセンター研究所に整備し、がん早期発見の最重要課題であった細胞内の代謝物質の解析技術の開発を共同で行うことに合意し共同研究契約を締結いたしました。

これまでがんの早期発見には、血液検査による腫瘍マーカーやPET、CTに代表される画像診断が駆使されています。静岡がんセンター研究所のゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス解析技術に加え、HMTのメタボロミクス技術[CE-MSメタボロミクス解析システム]を統合し、世界でもトップクラスの“統合オミクス”による解析技術を用いることで、がんを遺伝子・代謝の両側面から解析し、腫瘍マーカー探索およびがん発生メカニズムの解明研究が可能となります。これにより、早期がんの革新的診断技術の開発が加速されるとともに、がん治療効果のモニタリング技術や抗がん剤の新規評価法開発、新たな分子標的薬の探索が容易になることが期待されます。

がんの早期発見が簡便な検査で実現できるようになれば、健康診断や人間ドック時に早期のがんを発見できる可能性が高まります。本共同研究では、患者数の多い、胃がん、子宮体がんの早期発見技術の開発から取り組みます。

※メタボロミクス技術:メタボローム解析(メタボロミクス)は、細胞や生体内に存在するアミノ酸や糖、脂質などの代謝物質を網羅的に測定し、生命現象を総合的に理解しようとする研究分野。遺伝子を解析するゲノミクス、トランスクリプトミクス、たんぱく質を解析するプロテオミクスなどとともに、生命科学における解析手法のひとつとして注目されている。解析手法はGC-MS法、LC-MS法などがあるが、CE-MSによるメタボロミクス解析手法は先端的な技術として、Natureにも記載されています。

臨床医からのコメント(静岡がんセンター病院 胃外科部長 寺島雅典医師)

胃がんは我が国で最も多いがんでありますが、早期の状態で発見されれば、内視鏡的切除や、腹腔鏡下の手術で根治する事が可能となります。胃がんの検診にはバリウムによる胃透視や、内視鏡検査が行われていますが、時間の制約や検査の負担などにより受診できない方も少なくありません。今回“統合オミクス”の解析技術を開発する事により、これまで不可能であった血液検査による胃がんの早期発見が可能となる事が期待されます。また、この技術の応用により、手術、化学療法による効果を治療前に予測し“癌治療の個別化”を実施する事も可能となります。

開発に携わる研究者からのコメント(静岡がんセンター研究所 地域資源研究部長 楠原正俊医師)

これまでのゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクスに加え、この度、私たちはメタボロミクスのラボを立ち上げました。これにより癌の総合的な生化学的解析評価 がより詳細にできるようになり、診断や治療の新しいマーカーを発見につながると確信しています。患者さんの負担が少なく、かつ感度のいい検査法の開発を目指したいと思います。さらに、総合オミクス解析技術は、癌細胞内の生化学的変化を多角的にとらえることを可能にしますので、癌の病態生理を理解するうえで、非常に強力なツールと考えます。がん研究の新たな展開が期待できると思います。

プロファイル

○静岡県立静岡がんセンター研究所:平成17年11月に静岡がんセンター病院に隣接して開所。8つの研究部門と3つの研究支援室による研究開発を行う。免疫治療研究部や新規薬剤開発評価研究部などがん診断や治療の基礎的な研究部のほか、患者家族のQOLを向上させる看護技術開発研究部、患者家族支援研究部なども設置しており、ベッドサイドニーズに基づく臨床応用可能な研究を進めている。本研究に関連する遺伝子診療研究部では疾患マーカー候補タンパクを用いた検査キットの開発を行っている。

○静岡がんセンター病院:平成14年9月に開院、現在ベッド数 569 床(全床開棟時は615床を予定)のがん高度専門医療機関。陽子線治療施設や国内最大数の緩和ケア病室をもつなど、最先端の治療から心のケアまで全人的な治療を行っている。都道府県がん診療連携拠点病院、全国がん(成人病)センター協議会加盟、治験拠点病院等。またファルマバレープロジェクト(富士山麓先端健康産業集積プロジェクト)の中核的施設として位置づけられており、平成17年より企業や大学等との共同研究を開始。これまで40以上の企業・大学等との共同研究を行い、隣接の研究所内には16の「産学官・医看工連携研究室」が設置され、現在2企業・3大学から研究員が派遣され静岡がんセンターとの共同研究が行われている。

○ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社:HMTはCE-MS法の技術をもとに2003年7月に設立され、新しい疾患マーカー探索技術として注目されているメタボロミクス技術で世界をリードするバイオベンチャー。主な事業内容はCE- MSを利用したメタボローム受託解析で、メタボローム解析技術を用いた疾患マーカー探索のほか、医薬、機能性食品、発酵プロセスの最適化などの分野で実績を上げている。今後は環境、エネルギー、化学などの分野も視野に入れ、幅広い分野での貢献を目指している。設立以来一貫してメタボロミクス技術を用いた疾患マーカー探索を行っており、2009年8月にも精神疾患マーカーを発見し特許を出願している。

※このニュースについてのお問い合わせ
営業・マーケティング部 井元
TEL: 03-3562-7117

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このニュースは以下のメディアでも報道されました

・日本経済新聞 10月29日付
・日刊工業新聞 11月2日付20面
・静岡新聞 10月28日付25面

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