バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。前回のがんとメタボロームの続きについてお話したいと思います。
前回は、がん細胞はエネルギー獲得と同時に増殖に必要な細胞内構成成分を生合成するのに有利な代謝を行っていること、グルコースやグルタミンを大量に取り込み、解糖系およびグルタミン分解が活性化されていることをお話しました。
グルコースは解糖系でピルビン酸に変換され、乳酸脱水素酵素によってさらに乳酸に変換されます。グルタミンも、グルタミン酸を経て、2-オキソグルタル酸に変換され、ミトコンドリア内のTCA回路に入り、リンゴ酸が生成されます。生成された一部のリンゴ酸はミトコンドリアから再び細胞質へ出て、リンゴ酸脱水素酵素によってピルビン酸に変換され、グルコース由来のピルビン酸の場合と同様に乳酸に変換されます。そのため、ピルビン酸から乳酸への反応はがん細胞代謝において非常に重要な働きをしています。
がん細胞内で、乳酸蓄積に関して、グルコースとグルタミンがどの程度寄与しているかについては大変興味深い問題で、いずれお話したいと思いますが、今回はピルビン酸から乳酸を生成する乳酸脱水素酵素に着目して、この酵素ががん細胞の増殖に重要であることを示した論文について説明します[1]。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。いつもは植物とメタボロミクスについてお話していますが、今回からがんとメタボロミクスについてもお話ししていきたいと思います。植物とメタボロミクスについても引き続きお話していきますので、こちらもよろしくお願いします。
がんの研究の世界では、どのようなメカニズムを働かせて正常細胞からがん細胞に変換され、がん細胞が増殖し続けるのかについて明らかにするために、20世紀の終わり頃はがん遺伝子、がん抑制遺伝子を同定する仕事がたくさん行われてきました。その結果、がん化あるいはがんの抑制に関わる遺伝子が多く同定されてきました。…