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HMTからのお知らせ

空気が大事


おはようございます。こちら、先週木曜(3/18)の鶴岡の様子をお届けしております(加工写真ではありません…)。思わずカレンダーを見直した、バイオメディカルグループの大賀です。

3月14日は別の意味でのホワイトデーでしたね。鶴岡研究所ではバレンタインデーのお返しに、有志男性陣でマシュマロを作り、月曜日におやつパーティーを開催しました。調理を始めるまでは、マシュマロって本当に家庭で作れるの? という印象でしたが、その作り方は意外にお手軽でした。

まず卵白を泡立てて、溶かしたゼラチンと砂糖を混ぜ込み、お好みでフレーバーパウダーを加えます。それからカタに流し込んで冷やし固めた後、一口大に切り分け、最後にコーンスターチをまぶせば、ハイ完成!てな具合でした。お菓子作り素人の私にはそれでも不安でしたが、HMT が誇るパティシエN氏監修の下、ちゃんと、あのフワフワ感があるマシュマロが出来ましたよ。女性陣からも好評をいただき、オフィスの”空気”も、また一段と甘くてやわらかな感じになった様です。

手作りよりも買ったお菓子の方が安全では?とも思いましたが、みんなでチャレンジしてみて、本当に良かったと思います。

さて、マシュマロの材料として使われるゼラチンですが、その原料は、私達の体内にもあるタンパク質のコラーゲンです。多細胞生物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分であり、細胞間の接着やシグナル伝達など、様々な重要な役割を担います。私たちヒトでは皮膚や軟骨に存在し、その総量は、実に体内タンパク質の3割を占めているそうです。

コラーゲンというと、美容や健康のサプリメントとして耳にされた方も多いかもしれませんね。残念ながら、経口摂取したタンパク質は基本的に消化・吸収の際に小さなペプチドに分解されてしまうので、食品などに含まれるコラーゲンも、そのものが直接お肌に行き渡るということは期待できません。

ただ、最近ではコラーゲン由来のペプチドやアミノ酸に関する生理効果や、実際にコラーゲンの経口摂取による健康効果も報告されているようです。実は、コラーゲンの生合成や可溶化など、この分野で特筆すべき研究業績は、日本人の研究者によって成されています。コラーゲンの生物学的機能については、細胞の分化誘導や酸欠への適応機構など、最近のホットなテーマも見つかっているので、上記のサプリメント効果も含めて、日本が世界をリードできると良いですね。

ところで、タンパク質は基本的に20種類のアミノ酸から構成されますが、実は、コラーゲンにはそれらと異なる特別なアミノ酸が含まれています。その一つに、Hydroxyprolineという水酸化アミノ酸があり、水素結合を形成することでコラーゲンの構造安定性に寄与しています。このアミノ酸、もともとは一般的なアミノ酸であるProlineがコラーゲン前駆体タンパク質に組み込まれた後、タンパク質中で水酸化反応を受けて形成されます。この反応では、細胞内に存在する分子状酸素(O2)が、水酸基の元として使われています。そのためかコラーゲンの産生では大量の酸素が消費され、また酸素量(分圧)によって作られるコラーゲンの種類が変わったりもするそうです。

そういえば、数年前にNHKの番組で有名になった「スノーボールアース(全地球凍結)仮説」では、凍結融解後の地球で大量の酸素が発生し、コラーゲン産生が可能になったことで、初めて多細胞生物が生まれたんだ、という説が提唱されていました。この仮説自体はまだ議論の中にありますが、いずれにせよ、コラーゲンの誕生という点においても、私達の進化には「空気(大気)」が大事だったようですね。

一方、コラーゲン=ゼラチンは生命の進化だけでなく、生物学の発展にも大いに貢献しています。細胞を培養する際には、液体培地をゼリー状に固めた固形培地を使いますよね。最近では寒天を用いたものが良く使われますが、歴史的に初めて作られた固形培地は「近代細菌学の開祖」であるコッホ博士の研究室で生まれたゼラチン培地でした。また、多細胞生物細胞の培養では、三次元培養における足場や細胞分化の誘導場として、最先端の研究分野に利用されています。

おや、そういえばマシュマロの材料も、糖源(砂糖)と蛋白源(卵白)とゼラチンですねぇ…これってつまり…

「マシュマロって、固形培地に”空気”を吹き込んで、おもいっきり攪拌したようなモノではなかろうか!」

とまぁ、そんなことをおやつタイムを楽しんでいるみんなの前で危うく口走るところでした…“空気”をぶち壊さずに済んで、ホント、良かったと思います。

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メタボロ太郎なう

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