こんにちは、バイオメディカルグループの大賀です。
こちら鶴岡研究所、今日は新年度に向けての席替えを行っています。デスクと一緒に気持ちも入れ替えて、新しい年度の幕開け準備が整いました。
そういえば、この4月からはじまるものの一つに、Nature Group から新発刊される「Nature Communication」がありますね。Natureというと私、個人的には購読するか否か悩ましい「お高い」ジャーナル、というイメージがあるのですが、Nature Communication はオープン・アクセス・ジャーナル とのことです。創刊号として掲載されるのはどんな論文でしょう?楽しみですね。
そんなNature(本誌)先週号に、面白い論文が掲載されていました。
Nitrite-driven anaerobic methane oxidation by oxygenic bacteria (酸素生成細菌による亜硝酸駆動型の嫌気的メタン酸化)
これまで生物が酸素を発生させる経路は、光合成、塩素呼吸、活性酸素の無毒化、の3つが知られていましたが、今回の研究では、硝酸塩(NO2-)から酸素を発生する、4つめの経路が新たに発見されました。
無酸素土壌で生育するメタン分解菌の存在は知られていましたが、その優勢菌を単離してゲノムを解読したところ、なんと、あるはずがない酸素を使った代謝酵素の遺伝子が発見されました。トランスクリプトームやプロテオームで確認してみても、やはりその酵素は、実際に細胞内に存在するらしいと。しかし、もともと酸素とは出会ったこともないはずの菌が、どうしてこんな代謝系を持っているのでしょうか?
最終的に、安定同位体を使ったラベル追跡実験により、亜硫酸塩(NO2-)から窒素(N2)と同時に酸素(O2)を産生して、メタン(CH4)の酸化に利用する代謝が提示されました。メタンに満ちた嫌気的な環境は古代の地球とも共通する点があります。今回発見されたこの代謝は、ひょっとすると、光合成以前の原始的な生物からずっと保存されてきたものかもしれません。
未知の代謝経路の発見(そしてあわよくば自分の名前が残ること)は、生化学者にとって、一つの憧れですよね。
私たちヒトや身近な動物では、主要な代謝経路は既に研究され尽くしているのかもしれません。一方、二次代謝が多様な植物や昆虫、そして私たちがまだ遭遇したこともないような種を含む微生物の細胞内には、大発見がまだまだ残されているのではないでしょうか?今回の研究のように、オミクスから得られたデータが、そんな代謝発見時代の幕を開くことを期待しましょう。
それでは、明日から皆様にとって良い年度がはじまりますように。
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