バイオマーカー・分子診断事業部の山本です。5月21日,22日に、統計数理研究所で行われた、日本計量生物学会に参加してきました。
この学会に参加した理由は、共同研究の際にメタボロミクスのスタディの設計で医学統計の知識が必要だと感じていること、数ヶ月前に共同研究をしている某先生からお酒を飲みながら『お前は疫学を勉強しろ!』と言われたこと、また昨年度の学会がインフルエンザで無くなってしまってそのリベンジ、などが色々と重なった結果、参加することにしたのでした。
学会の内容は、製薬企業の臨床研究、医学統計、生態学・水産学等の分野での最近の動向、理論的には新しい統計モデルや検出力と症例数設計、オミクスではDNAマイクロアレイのデータ解析と、分野だけ見るとかなり多岐に渡った内容になっていました。でもそれらのその基礎には全て統計があります(計量生物学会なので当たり前ですが…)。
発表内容について面白かったものを簡単に紹介します。
丹後俊郎氏の招待講演“Statistics in Medicine”では、丹後氏のこれまでの研究歴が話され、研究のモチベーションが単に理論の改良ではなく、現実の問題から統計モデルを作るところを重要視しており、自分に置き換えてみても参考になりました。
次に田栗氏による“副作用による脱落を考慮したフローズングローブ使用による乳がん術後化学療法の副作用予防効果の検討”では、乳がんの薬物療法に用いられるドセタキセルには, 皮膚障害の副作用があり、治療中にフローズングローブ(手袋)を付けると, 副作用の予防効果があるそうです。しかしその予防効果のデータには一般に脱落と呼ばれる欠測値があり、その欠測の情報をきっちり統計モデルに入れて解析をし直すと, その効果が従来の検討よりもさらに大きい事が示唆されたという結果になっていました。この話も、現実の問題を良く考えてそれを統計モデルとして導入し、それがうまくいっているところが、凄く面白いと思いました。
今回の学会では、特に現実の問題を良く考えて統計モデルを作ることが非常に重要であると感じました。
最後に統数研は、極地研と国文研が隣接しています。写真が無いのが残念ですが、極地研の展示が凄く面白くて、南極のペンギンの剥製とか、南極での服装の展示等があり、リアルすぎて衝撃を受けました。国文研でも昔の本が展示されていたり、展示会のようなものも行われていて、凄く不思議な場所でした。どちらの展示も一般に開放されているようなので、仕事とは別にまた行こうかなという気になりました。場所は、立川からモノレールで高松駅で降りて、歩いて10分くらいの所にあります。