毎年この時期に日本最大の分析機器関連の展示会(JASIS)が開催されます。(写真1)
メタボロミクス関連の測定機器、新技術も展示・発表されるので目が話せません。
アメリカでは同様にASMSという質量分析学会併設展示会があります。最近の傾向として、測定の応用分野はライフサイエンスと生活の中での計測関連がトレンドで、今回、この分野では展示会場に二つのフォーカスイノベーションフォーラムが開かれていました。個人的には質量分析計そのものと、仕事柄、メタボロミクス、ライフサイエンスへの応用に興味を持って回ってきました。(写真2)ここではその印象と感じた変化について述べたいと思います。
島津、Agilent、Thermo Fisherなど大手の分析機器メーカーはアカデミアを中心とした汎用の分析機器開発と平行して、バイオ、医療、健康(ライフサイエンス)向けの応用開発で市場拡大を狙っています。HMTが取り組んでいるメタボロミクスも狙いの中の一つです。今回のライフサイエンスイノベーションゾーンで配布された資料(創薬のひろば)に“ベースライン研究とメタボロミクス”が特集されていました。(写真3)やはり、これからの医療、予防は遺伝子、代謝物情報が欠かせないという視点で書かれていました。
一つのトレンドは、疾患を効果的な薬や手術で治癒するという考え方と、一方で、それを未然に防ぎ、疾患にならないように生活をしてゆこうという考えが広がっているということでした。(写真4)
それを実現するためには現状の健康度レベルを把握することが大事で、いままでの健康診断とは違った指標が必要です。健康を論じるときに個々人(パーソナライズ)のベースラインとなる健康の定義(正常値の指標)をどう表現するかが大きなテーマで、それはまさに遺伝子情報よりもメタボロミクス情報の世界です。また、その状態を維持するために必要な生活習慣もその人に合った、ある程度のエビデンスに基づいて良いとされるパーソナライズ生活習慣や活動が必要です。またエビデンスがあることで、さらに数値がモニターできることでそれを継続するモチベーションも得られるようになってくると思われます。HMTの説明会でよくお話しさせていただいている、食事、運動、睡眠、ストレスへの意識改革が大事で、その影響が今どのレベルにあるのかを把握できる指標開発が必要であり、HMTはその開発に貢献できると考えています。(写真5)
そんなことを考えると、HMTの役割は本当に大きなものだと自負しています。遺伝子解析は分析機器そのものの性能が生産性や品質に大きく関わってきますが、メタボミクスのそれは測定法や品質管理方法そのものに依存しているために、その点を重視した解析を長年行っているHMTには、出番があります。特に、医療関係、ヘルスケア関連では長期にわたる解析が必要になるために、長期的に安定なデータが求められます。HMTはそれらのニーズにお答えするために各種改善に努めていますが、それを外部にも表現できるようにISOの認証を取得しています。
これから予防、予知などの健康関連産業の高まりとともにHMTの存在価値はますます大きなものになって行くと思います。その期待にお答えするために更なる革新にチャレンジしたいと思います。また、今回のJASISに参加して、今まで取り組んできた安定なメタボーム解析技術開発、バイオマーカー(指標)探索が間違いはなかったと確信しました。
蛇足1.古巣のAgilentの受付で受付嬢と
蛇足2.Agilentの社長と