こんにちは、分析グループの藤森玉輝です。理化学研究所植物科学の近くにある横浜市立サイエンスフロンティア高等学校で行われた第4回メタボロームシンポジウム(11月18日~19日)に参加してきました。
口頭発表は、基盤技術・分析手法で5件、インフォマティクスで5件、医療・医薬で8件、リピドミクスで4件、微生物・寄生虫で5件、植物で5件ありました。ポスター発表は、私の主観で分野を分けますと、基盤技術・分析手法で5件、インフォマティクスで9件、医療・医薬で9件、リピドミクスで3件、微生物・寄生虫で3件、植物で21件ありました。扱っている生物で区分けしますと、微生物・寄生虫が少なく、植物が多い印象を受けました。弊社では、口頭で大橋、ポスターで永嶋、山本、佐々木が発表を行いました。
医療・医薬の分野では、慶應大学の癌細胞の代謝機構を明らかにする研究が最も進んでいました。このグループでは、癌細胞特異的にTCAサイクルの代謝中間体が特異的な挙動を示すことを明らかにしていました。一方、福井大・放医研のグループでは、癌細胞では正常細胞と比較して酢酸を多く生成しており、さらにこの酢酸生成に関わる遺伝子を同定しました。酢酸は慶應大学の測定システムでは検出できない物質であり、慶應大学のグループにとって盲点となっていたようです。感染研のグループでは赤痢アメーバが酸化ストレス応答で新規代謝経路が働いている可能性を示唆するデータを示しました。
インフォマティクスの分野では、メタボローム研究自体が新しい学問であるためか、ひたすらデータを蓄積するものばかりで、メタボローム解析データを使って何かを明らかにするという研究はまだ始まっていないという印象を受けました。
植物の分野では、非常に多くのポスター発表がありましたが、メタボローム解析をすることで分子メカニズムに迫る研究は数少なかったです。その中で、神戸大のグループは、単離した液胞を用いてプロテオーム解析およびメタボローム解析することで液胞の糖リン酸トランスポーター候補を明らかにしました。液胞が積極的に糖リン酸を取り込むことを明らかにすることができれば、植物の液胞について新たな概念を提唱できる研究になると思います。
メタボローム研究は、数年前までは測定して、その結果を基にディスカッションするだけでしたが、今年度のメタボロームシンポジウムの発表ではメタボローム測定するだけでなく、分子メカニズムの解明に近づいている研究がいくつか見られるようになりました。今後は、メタボローム解析することは当たり前になり、さらにどう進めるかが重要になってくると予想しています。数年後のメタボロームシンポジウムの発表内容のレベルがどうなっているのか楽しみです。