こんばんにゃ。この瞬間のために、3 分前からモニター前で待機していました。なんでしょうね、撮影を終えた後に感じたあの達成感と虚しさは...バイオメディカルグループの大賀です。
なにはさておき、昨日は2月22日、にゃんこ (猫) の日だったそうですね。
この場で言うまでも無く、ネコは人間にとっての古くからのパートナー。もともとはネズミを捕獲する、穀物の番人として飼われていたそうですが、今では時に、家族の中でお父さんよりも地位が高いこともあるとかないとか。特にネコ派という訳ではない私ですが、それでもたまに動画などでそのかわいさにノックアウトされることがあります。
ネコはヒトと同じく丸い頭部に正対する眼窩を持っており、眼による感情表現が豊かなのだそうです。こういった顔の作りからも、人間はネコに対して特別な親近感を抱きやすいのかもしれませんね。
少し前になりますが、2007年にネコのゲノムが解読されています。アビシニアンの“シナモン”ちゃん (米国在住) から 20,285 個の遺伝子が特定され、進化における哺乳類の染色体分岐に関しての知見が得られたそうです。また「飼い猫には 250 種以上の遺伝性疾患があり、その多数はヒトの遺伝病と類似している」とのことで、得られた成果はネコだけではなく、パートナーである人間の医療にも役立つのだとか。
このように情も、遺伝的特徴も、多くの面で通じ合えるネコとヒトですが、やはり生物として超えられない壁も存在します。それは食性、つまり「代謝」です。今回は私、少し調べただけでも、そうだったんだ~、ということがたくさんありました。
そもそもネコは純粋な肉食動物。イヌ等と比べても高タンパク・高カロリーな食事が必要で、野菜類や穀物類はさほど必要ありません。ネコの唾液にはデンプンを分解するアミラーゼが含まれておらず、その消化吸収能力はイヌよりも 2.5 倍も劣るそうです。
また、ヒトにとっては無害でも、ネコにとっては猛毒になってしまう食べ物って結構ありますよね。有名なところでは、葱やたまねぎによって引き起こされる溶血性貧血 (タマネギ中毒) があります。これは、ネギ類に含まれる「アリルプロピルジスルファイド」という含硫黄代謝分子が赤血球を損傷することで起こるのですが、この毒性反応には「グルタチオン」という別の含硫黄代謝分子が必要であり、赤血球内のグルタチオン濃度が高い動物ほど重症を呈するそうです。ちなみにイヌなどでは赤血球内のカリウム濃度が高いため、僅かな溶血による流出でも高カリウム血症が起こりやすく、死亡の危険性が高いそうですよ。
もう一つ有名なのは「ネコがイカを食べると腰を抜かす」というお話。イカ (特に内臓)には、「チアミナーゼ」という「ビタミンB1」分解酵素が含まれており、過剰に摂取すると ビタミンB1 欠乏症になります。ネコは体内で ビタミンB1 を合成できず (ヒトでは食物の他、腸内細菌による供給もあります)、 その要求性が大きいために欠乏の危険性が高いのだそうです。一方で、イカやタコにはネコが合成できない「タウリン」という代謝分子 (こちらはヒトの体内で合成できます) が多く含まれています。チアミナーゼは加熱によって活性をなくすことが出来るので、加工して一部のキャットフードに含まれたりもするようですよ。
この他、カフェインをはじめとしたアルカロイドや貝類が蓄積しているクロロフィルなど、ヒトにとっては害が少なくとも、ネコにとっては命取りな代謝分子は結構あるものですね。
ところで今回の調査、個人的には、上記のネギ類抽出物や塩分過多といった危険性から、「ねこまんま」がネコにとっては全くよろしくないもの、という事実が一番ショックでした。美味しいんですけどねぇ、アレ...
動物たちをパートナーとして扱うようになったこの時代、メンタルケアも含め、動物医療の技術が大きく進歩しています。一方で、毒物を含めた種特有の代謝に関しては、まだ科学的な検証が十分に行われてないケースもあります。今後の研究で、彼等の、色々な「内面」が明らかになることを期待したいですね。
注)なお、今回の内容は主に複数のインターネットサイトからの情報を参照しています。出来るだけ信用度の高い情報を選んでいますが、原著文献を確認できなかったものも含まれますので、ご了承下さい。特にペットの健康に関することは、ぜひ獣医師等専門家にご相談の上でご判断ただけますようお願い申し上げます。