HMTメタボローム解析事業部の菅原洋平です。HMT本社のある鶴岡市に伝わる伝統芸能「黒川能(くろかわのう)」を鑑賞して参りました。
黒川能とは、500年前から鶴岡市黒川地区に伝わる能です。能古来の姿をそのままに伝えていると言われ、国指定・重要無形民俗文化財に指定されています。世阿弥が大成した後の猿楽能の流れに属しますが、その後独自の伝承を続け、独特の形と中央ではすでに滅びてしまった古い演目を数多く残しているとのこと。
※山形県鶴岡市観光連盟Webサイト参照
https://www.tsuruokakanko.com/kushibiki/kurokawa/gaiyo.html
私は鶴岡出身ながら、今回が初めての鑑賞。ガーナ出身のHMT社員Dr.ダグラス・オセイ・ヒアマンと一緒に、ろうそくの明かりだけで能を演じる「蝋燭能(ろうそくのう)」に行ってまいりました。ちなみに、Dr.ダグラスはスゴイ研究者なのですが、詳しいご紹介は又の機会に。
会場は、黒川地区内の春日神社内。近くの席の人と話すと、京都・静岡・神奈川など、全国各地から来ている事がわかり、人気の高さを実感しました。
開演前、会場内の電気照明が消され、裃をつけた凛々しいお兄さんが、厳かにろうそくに火を灯して行きます。
今回の演目は、
能「羽衣」
狂言「文相撲」
能「土蜘蛛(つちぐも)」
の三本。
能「羽衣」は、天女の優雅な舞と鮮やかな衣装が印象的。あまりの優雅さにDr.ダグラスはしばし眠っていました(笑)。
狂言「文相撲」は、打って変わって、楽しい喜劇。この地域の方言も取り入れられているようで、これまた印象的。
そして、私が何より楽しめたのは、最後の能「土蜘蛛(つちぐも)」。土蜘蛛の精(つまり「お化け」)と武者の戦いのお話で、土蜘蛛がクモの糸をバンバン投げつけて攻撃するシーンは、理屈抜きに面白かったです。
実は、私が一番感銘をうけたのは、能そのもの以上に、舞台を創り上げる地元の人々の姿でした。それから、舞台の合間には、観客の方と演者の方とが顔見知りのように、楽しげに談笑している姿でした。「黒川能」というイベントを通じて、人と人とがつながっていく。そして、それが500年以上にも渡って受け継がれていることに、しみじみ思いを馳せていたところ、Dr.ダグラスが「人ハ、一人デワ、生キラレナイ。『人間』トイウ字ハネエ、『人』ニ『間』ト書クデショ。『人』ト『人』トノ『間』ガ、ツナガッタ時、ホントノ『人間』にナルンダヨ」と語りかけてきたので、「うわっ、同じことを考えてたんだ!」&「Dr.ダグラス、なんでそんな『金八先生』的ネタを知ってるんだ?」と驚いた次第(笑)。
さて、なんと今年11月には、国立能楽堂(東京)での黒川能公演が決定したそうです。鶴岡の伝統芸能が、生き生きと現代に伝わり、全国の人から受け入れられていることに、改めて誇りを覚えた一日でした。