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ABC's of Metabolomics

いまクールなメタボローム解析とは? -食とメタボロミクス②


こんにちは、B&Mの大賀です。今回は食品の中でも植物に関する最近のメタボロミクス研究をご紹介します。植物の生産性に関しては、以前に藤森も「植物の生産性向上のためのメタボローム」の中でメタボロームを採り入れた取り組みをご紹介しましたが、「食品」という観点では、品質や風味の管理・改善にメタボロミクスが活用されています。

日本の主食は米ですが、海外の広い地域ではイモが主食として活躍しています。Dobsonらは、植物の代謝プロファイルから育種に役立つバイオマーカーを抽出することを提案しています。

具体的な例としては、作年・産地が異なるジャガイモ塊茎にできた黒塊の様相を反映する代謝プロファイルを取得し、その結果からより品質の良い塊茎が得られるような育種を試みています。実際に株を確立することは今後の課題ですが、予想モデルは精度良くできています。

ジャガイモに関しては、Steinfathらも、異なる遺伝型を反映するプロファイリングを試みています。こちらの研究では、複数の遺伝型における代謝分子同士の相関関係を調べたところ、一部のアミノ酸や糖が大きく寄与していたそうです。

一方、Zhangらはイチゴの成熟過程における代謝プロファイルの変化を報告しています。白い果実が赤く熟するまでの期間に貯蓄量が変化する代謝分子を調べたところ、全体的な増加があったうち、特に糖類や赤色の素となる色素類が顕著に増加していました。果物の見た目や風味にはフラボノイドを含めた二次代謝物が大きく寄与していますが、McDougallらは漿果(ベリー)に含まれるそれら成分の測定法を報告しています。小さい頃、毎年春の短い時期で果実の色も味もガラリと変わるのが不思議でしたが、この歳になってメタボロームプロファイルの変化という形で目にすると、改めてよく出来たシステムだなぁ、と感心します。

また、身近なところでは日本茶の品質評価にもメタボロミクスの活用が試みられています。Jumteeらは、専門家による官能試験の結果と代謝プロファイルの比較を行い、メタボロミクスが人の感性を再現できるか、という課題に挑戦しています。GC-MSとGC-FDIで測定できる成分を対象にした試験ですが、メタボロームデータによる予想は、実際の官能試験結果とよく一致していました。

食品という観点では、生育や耐性の様なはっきりした指標ではなく、味や見た目といった「ファジー」な評価が重要視されるケースがあります。そのような場合は、特定の成分に着目するより、オミクスで全体的なプロファイルを観た方が「人間の感覚」に近づけるのではないでしょうか。

[1] A metabolomics study of cultivated potato (Solanum tuberosum) groups Andigena, Phureja, Stenotomum, and tuberosum using gas chromatography-mass spectrometry.
J Agric Food Chem. 58(2) 1214-23, 2010
PubMed

[2] Steinfath M, Strehmel N, Peters R, Schauer N, Groth D, Hummel J, Steup M, Selbig J, Kopka J, Geigenberger P, Van Dongen JT.
Discovering plant metabolic biomarkers for phenotype prediction using an untargeted approach.
Plant Biotechnol J. 8(8) 900-11, 2010
PubMed

[3] Metabolic profiling of strawberry (Fragariaxananassa Duch.) during fruit development and maturation.
J Exp Bot. ,
PubMed

[4] Towards fruitful metabolomics: high throughput analyses of polyphenol composition in berries using direct infusion mass spectrometry.
J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 871(2) 362-9, 2008
PubMed

[5] Fast GC-FID based metabolic fingerprinting of Japanese green tea leaf for its quality ranking prediction.
J Sep Sci. 32(13) 2296-304, 2009
PubMed

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