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ABC's of Metabolomics

バイオマーカー探索 その4 – 検体の取り扱い


研究開発本部の藤森です。今回は、疾患のバイオーカーを探索する際の検体の取り扱いについて、考えてみたいと思います。

前回話題にした通り、バイオーカーの対象としては、遺伝子塩基配列、mRNA、タンパク質、代謝物質等があります。遺伝子塩基配列以外は、その特性上、様々な要因によって分解あるいは修飾を受け、異なる物質に変換されてしまうリスクがあります。そのため生体内の物質量を正確に検出するために、検体の取り扱いには特に注意を払う必要があります。

例えば血液を用いてバイオーカー探索をする場合の保管条件について、大きく分けて以下の2つのフェーズに分けられます。

  1. 被験者から血液採取後、血漿、血清等に分離し、凍結するまで
  2. 凍結してから測定までの保管

1では、血漿に分離するまで氷上に置くか?冷蔵庫内に保管するか?室温で保管するか?、遠心分離を何分以内に行うか?血漿分離後は何時間以内に凍結するか?冷凍庫内で凍結させるか?液体窒素で瞬間的に凍結させるか?などを検討する必要があります。

血液を採取してから血漿を分離するまでの時間が長くなると、血球、血小板等からいろいろな物質が放出され、分離後の血漿中の物質のプロファイルは変化します。つまり、採血から血漿分離までの時間が30分の時と、12時間の時では、血漿中の物質のレベルが大きく異なります。

2では、検体を-80℃、-20℃、液体窒素中のどの条件で保管するか?どれくらいの期間保管による影響がないか?を検討する必要があります。すべての物質が一律に経時変化するわけではなく、ある物質は-80℃で1年以上安定だが、別の物質は3か月間しか安定に保管できないという場合もあります。

この問題の難しいところは、候補となるバイオマーカーの物質としての性質により、最適な解が変わるということです。そのため、バイオーカー候補を同定するまでは、最適な解は分かりません。

つまり、バイオーカー候補となる物質を同定した後、同定した物質に着目して検討を行うことにより、採血から保管までの最適条件が初めて明らかになります。

まだ何がバイオーカー候補になるか分からない時点では、生体内の物質量を正確に検出するために、出来る範囲のことをすべきでしょう。

例えば、探索試験として健常者30人、患者30人の検体を集めるのに1年以上の期間を要する場合、最初に検体を採取・保管してから最後に保管を完了させるまでの期間における検体中の物質の安定性を考慮すると、‐80℃あるいは液体窒素下で検体を保管するのが現状できる範囲でのベストであると我々は考えています。

上記問題提起が、皆様が疾患バイオーカーの探索を行う上での一助になれば幸いです。

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メタボロ太郎なう

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