研究開発本部の藤森です。約1年間バイオマーカー探索についてのコラムを書いて来ましたが、今回で最終回です。
疾患バイオマーカーの探索を目的として研究を行う場合、メタボローム解析から得られるデータは通常相対定量値です。しかし臨床の現場では「物質Aの血中濃度がXμM以上(以下)であればその疾患に罹患している(していない)」と判断されるので、この時点では絶対定量値が算出できる必要があります。…
研究開発本部の藤森です。今回は、疾患バイオマーカー探索におけるメタボロミクスデータのリスクについてお話したいと思います。
健常者群とある疾患の患者群において、疾患バイオマーカーとなる代謝物質を液体クロマトグラフィー-飛行時間型質量分析計(LC-TOFMS)あるいはキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)によるメタボロミクスを用いて探索した場合、メタボロミクスデータとして、ピークの保持/移動時間、質量電荷比および面積を得ることができます。
健常者群と患者群で面積が大きく異なるピークが見つかったら、そのピークの保持/移動時間と質量電荷比の情報に基づいてそれがどの代謝物質に相当するかを決定し、それがバイオマーカー候補となります。
このとき注意しなくてはならないのが、ピークが一つであったとしても、保持/移動時間も質量電荷比も同じの2つ(以上)の代謝物質に由来している可能性があることです。
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研究開発本部の藤森です。今回は疾患バイオマーカー探索における代謝物質の安定性の問題に関してお話ししようと思います。
ゲノムは基本的に安定なので、塩基配列の差異をバイオマーカーとして評価する場合、異なる時期に採取した血液検体のゲノムシークエンシングの結果を比較するのは比較的容易であると考えられています。
凍結保管血液中のゲノムは安定かつ定量性が問われないため、異なる時期に行ったゲノムシークエンシングの結果は比較可能です。それぞれ血液検体を採取した時にゲノムシークエンシングを行いその結果を比較しても、採取した血液検体を保管しまとめてゲノムシークエンシングを行いその結果を比較しても、結果に違いはないと考えられています。
一方、代謝物質の定量性をバイオマーカーとして評価する場合、凍結保管血液中の代謝物質は安定でなかったり、異なる時期に行ったメタボローム解析データの相対定量値を比較できないといった、解決しなければならない課題が生じます。…
研究開発本部の藤森です。今回は疾患バイオマーカー探索の試料の選択についてお話ししたいと思います。何を試料として選択するかは、マーカーの発見だけでなく、その後の診断キットの開発の成否にも大きな影響を及ぼします。
メタボロミクスによる疾患マーカー探索の論文を見てみると、試料として、血液(血漿、血清、全血)、尿(早朝尿、随時尿、蓄尿)、脳脊髄液、唾液、汗等が選択されています。…