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ABC's of Metabolomics

バイオマーカー探索 その1 – 対象となる疾患


研究開発本部の藤森です。今回は、バイオマーカー探索の対象となる疾患について考えてみたいと思います。

診断法の開発を目的とした疾患バイオマーカー探索を成功させる上で、3つの大きなポイントがあります。それは、

  • 対象となる疾患
  • 試料(血液、尿、唾液など)
  • 測定方法(ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等)

で、これらの選択が成功の可否に大きく影響すると考えられます。

メタボロミクスを用いた疾患バイオマーカー探索を行っている、論文等の刊行物・特許文献を調べると、論文等の刊行物では各種がんを対象に研究が行われていることが非常に多いです。一方、メタボロミクスを積極的に力を入れている会社の疾患バイオマーカー探索の特許文献を見ると、糖尿病関連疾患、肝疾患、前立腺がん、膵臓がん、自閉症、多発性硬化症などが対象になっており、がんに限らず多岐にわたっています。

おそらく論文では、注目されている疾患であることがバイオマーカー探索の対象として選ばれる要因の一つとなっているからではないでしょうか。もちろん注目されている疾患であるということは研究者の数自体も多いですし、そういった疾患のバイオマーカーを見つけることが論文自体の価値を上げるということもあると思います。

企業においてバイオマーカー探索の対象として選ばれる疾患には、その研究が社会的に価値があるというだけでなく、診断ビジネスとして成り立つか?という視点も必要とされていることが、論文とはまた違った疾患が対象に選ばれている理由でしょう。

患者数、現在有効な診断法があるのか、診断確定後に有効な治療法があるのか、診断法を開発した後に利益を上げることができるかなども考慮されて研究を進める疾患が選択されていると考えられます。

これまで疾患を診断するためのバイオマーカーは、疾患に罹患しているか、していないかを鑑別することを目的としたものでした。つまり基本的には疾患ごとにその疾患に罹患しているかしていないかを示すバイオマーカーが1つあれば十分でした。

しかし今後は、薬の投与前の効くヒトと効かないヒトの層別化、副作用が出るヒトと出ないヒトの層別化、投与する薬の量の最適化など様々な用途に合わせたコンパニオン診断マーカーの開発が求められており、コンパニオン診断ビジネスが少しずつ活性化していくでしょう。FDAのガイダンスでも、薬の開発と同時にコンパニオン診断薬の開発を始めるよう勧めていることから、この方向性はさらに加速していくと予想されます。

コンパニオン診断薬におけるバイオマーカー探索では、様々な層別化に加え、同じ疾患でも投与される薬によってバイオマーカーが違う可能性なども含めると、非常に多くのバイオマーカーを開発することになります。そのため、従来の診断ビジネスとは違った観点からバイオマーカー探索の対象となる疾患を選択することが求められてくるでしょう。

コンパニオン診断マーカーの開発が求められるようになったことは、メタボロミクスを用いたバイオマーカー探索の応用範囲を広げた、すなわちメタボロミクスを採り入れている企業のチャンスが大きくなったと言えると思います。今後にメタボロミクスがコンパニオン診断マーカーの開発にどのように貢献していくか、期待したいですね。

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メタボロ太郎なう

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