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医薬学

バイオマーカー探索 その7 – 網羅解析で顕在化するリスク


研究開発本部の藤森です。今回は、疾患バイオマーカー探索におけるメタボロミクスデータのリスクについてお話したいと思います。

健常者群とある疾患の患者群において、疾患バイオマーカーとなる代謝物質を液体クロマトグラフィー-飛行時間型質量分析計(LC-TOFMS)あるいはキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)によるメタボロミクスを用いて探索した場合、メタボロミクスデータとして、ピークの保持/移動時間、質量電荷比および面積を得ることができます。

健常者群と患者群で面積が大きく異なるピークが見つかったら、そのピークの保持/移動時間と質量電荷比の情報に基づいてそれがどの代謝物質に相当するかを決定し、それがバイオマーカー候補となります。

このとき注意しなくてはならないのが、ピークが一つであったとしても、保持/移動時間も質量電荷比も同じの2つ(以上)の代謝物質に由来している可能性があることです。


そのため、その代謝物質を別の分離条件で測定して、注目したピークに関して同じデータが得られるかどうか確認する必要があります。異なる2つ以上の分離条件で測定しても同じデータが得られて初めて、当該ピークの代謝物質を同定することができたと言えます。

CEと比較してLCは相対的に分離が悪いため、ピークが1つであったとしても2つ以上の代謝物質に由来するケースは多くなり、必然的に上記のリスクが内在している可能性も高くなります。

一方で、弊社のC-Scopeのように三連四重極型質量分析によるターゲット解析など、選択性の高いMS/MS解析であれば、2つ以上の物質が同一ピークを構成するような問題が生じる可能性は非常に低くなります。

バイオマーカー探索ではできるだけ多くの代謝物質を網羅的に検出するメタボロミクスを実施することが多いと思いますが、特定の代謝物質に特化して高精度に測定するターゲット解析ではほぼ問題とならないリスクが顕在化することに注意する必要があります。

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メタボロ太郎なう

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