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医薬学

バイオマーカー探索 その8 – 大規模データの多変量解析に向けた絶対定量の必要性


研究開発本部の藤森です。約1年間バイオマーカー探索についてのコラムを書いて来ましたが、今回で最終回です。

疾患バイオマーカーの探索を目的として研究を行う場合、メタボローム解析から得られるデータは通常相対定量値です。しかし臨床の現場では「物質Aの血中濃度がXμM以上(以下)であればその疾患に罹患している(していない)」と判断されるので、この時点では絶対定量値が算出できる必要があります。


ゲノミクスのデータは定性的で、サンプルの質や定量性は問われないため、異なる試験間のデータの比較やデータ統合によるメタアナリシスを含む各種統計解析が可能です。よって今後データが蓄積すればするほど、遺伝子検査の診断精度は向上していくと考えられています。

一方疾患バイオマーカー探索においてメタボロミクスデータは全体として相対定量値であるため、異なる試験間のデータの比較解析や異なる試験のデータ統合による統計解析、とりわけ多変量解析が非常に難しいです。

ただ、この問題は血中の代謝物質を絶対定量できる採血から測定までのプロセスを確立することで解決できます。各工程に内在する様々な問題を解決することにより、プロセス全体を確立することができれば、メタボロミクスデータの蓄積・統合が可能です。

まず遺伝子検査を一度行うことによって個人が持つ潜在的なリスクを判定し、その後毎年血液生化学検査と共に代謝物質検査を行うことによって、絶えず変化する健康状態のモニターが可能になります。

将来的には、潜在的なリスクと、その時その時の健康状態のデータを統合することにより、パーソナル健康指導法を提案する時代がやってくるかもしれません。

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メタボロ太郎なう

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