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ABC's of Metabolomics

実はよく分かっていないイソフラボンが体に良い理由


こんにちは、HMTの大賀拓史です

昨日は節分でしたね。もう、2月ですか...あえてもう一つの2月の行事には触れませんが、毎年この季節になると、お店の広告がカレンダーに代わって時の流れの早さを教えてくれます。

そういえば、私自身は最近、「豆まき」を全くやらなくなってしまいました。豆まきのやり方は地域や時代によって異なるかと思いますが、私が子供の時は、炒った大豆を部屋中にばら撒いて「年の数+1粒」を食べる、というスタイルでした。後で掃除の苦労が待っていることを知ってはいても、そこは自制心より勢いが勝る幼少期の自分。結局、それから数日間、年の数よりもはるかにたくさんのお豆がおやつになったことを覚えています。

その当時は全く意識していませんでしたが、最近はこの大豆に含まれている「イソフラボン」が大いに注目されていますね。

イソフラボンはマメ科植物がつくるフラボノイド類の総称 (狭義には3-phenylchromone のみ) で、その構造式の類似性から、一部のものは人体で女性ホルモン様の作用を持つことが知られています。それ自身は低分子なのですが、植物中では主に糖と結合した形 (グリコシド型) で存在しており、腸内細菌の働きで分解されて、はじめて人体に吸収されやすい形 (アグリコン型) になるそうです。日本が誇る発酵食品の「味噌」には、発酵過程で作られたたくさんの「アグリコン型」イソフラボンが含まれているそうで、効率よく吸収するにはもってこいなのだそうです。

これまでに、このイソフラボンが心血管疾患や癌を含めた様々な疾患予防に有効だ、という多くの報告があります。その有効性に女性ホルモン様の作用が関与していることはかなり確実なようですが、一方で疾患予防におけるその詳しいメカニズムや、あるいはその他に何か原因があるのか、といった点は、まだ多くの部分が解明されていないそうです。

疫学的には有効だけどその原因はまだ不明...このもどかしさを、誰かなんとかしてくれないでしょうか?と思いきや、ありました!イソフラボンに関するメタボロミクスの研究です。

この総説の中ではイソフラボンと疾患の関わりについて、過去の疫学的知見とプロテオミクス、メタボロミクスの研究成果がまとめられています。少し残念なのは、メタボロミクスに関しては結果がまだ出揃っていないようで、(まだ準備段階だ、と要約で著者自らコメントしています) 測定系の評価が中心となっていました。

総説の前半部分では、イソフラボンを中心に、大豆の機能食品としての有効性を証明する過去の研究成果が要約されています。どうやら、特に年齢関連性の疾患群に関しては、イソフラボンの持つ抗酸化作用が重要なようです。その抗酸化作用なのですが、in vitro(実験)では比較的弱いけれども、in vivo(実際の体内)でははっきりとした有効性が確認されているそうです。このあたり、どうにも一つの分子だけに注目していては説明できないような、複雑なメカニズムがあることを思わせます。著者らのグループでは、プロテオミクス(血清中の様々なタンパク質を調べるアプローチ)を使ってイソフラボンが持つ作用に迫っています。これまでに明らかになっているところでは、イソフラボンの摂取により脂質代謝酵素や金属結合蛋白、免疫に関わるタンパク質レベルに変化があったそうです。メタボロミクスはLC-MSで行われており、現段階ではイソフラボン投与の前後で代謝プロファイルの違いを区別できた、という段階だそうです。なかなか全てを解明、という段階ではないようですが、次々に新しい知見が明らかになっていることからも、今後の進展に期待がもたれますね。

ところで、上のような有効な作用の一方、女性ホルモン様の作用があることから、とくに妊娠中の方や小さいお子さんの場合には過剰な摂取を控えるべきだ、という注意が食品安全委員会から出ています。上記のレビューにも、イソフラボンを単独で摂取した場合と、その他の大豆の栄養成分と一緒に摂取した場合では、その効果が異なるという報告がされている、との記述がありました。イソフラボンに限らず最近では色々な種類のサプリメントが比較的簡単に手に入りますが、それらをより有効に活用するためにも、必要な量や摂取する際の注意点はちゃんと知っておきたいものですね。

しかし、そう考えてみると加齢に伴う疾患対策にも、また食べ過ぎないようにという意味でも、「年の数+1 粒の豆を食べる」という節分の習慣には、実は深い意味があったのではないかと思えてきます。この習慣には「一年を健康に過ごせるように」という意味があるそうですが、どうして「年の数+1粒」なのか、調べてみても正確な根拠は分かりませんでした。まさか昔の人がイソフラボンの効果を詳しく知っていたとは思えませんが、もしかすると、日々の生活から得た経験としてほどほどの食べ具合を知っていたのでは...? それが真実かどうかはともかく、伝統行事が持つ意外な実用性に一人で勝手に感動してしまいました。

大豆にはイソフラボンに限らずタンパク質やビタミンが豊富に含まれているので、適量摂る分には、素晴らしい栄養食品であることは間違いありません。個人的な経験から一つ言わせていただければ、『食べ過ぎて嫌いにならない程度に』どんどん食べていきたいものです。

明日から2日間、鶴岡本社で参加型セミナーを開催します。参加していただける方々に少しでもメタボロミクスを身近に感じてもらえるよう、社員一同で用意しておりますので、どうぞご期待ください。

[1] Health benefits of isoflavones in functional foods? Proteomic and metabonomic advances.
Wong, M. C. et al. Inflammopharmacology, 2008 16,235-239
[PubMed]

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メタボロ太郎なう

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