こんにちは HMTの大賀拓史です。
今年はすでに関東と九州で開花宣言が出たそうですね。鶴岡も気持ち良い晴れの日が多くなってきましたが、まだ時折、思い出したかのように雪が降ったりもします。
さて突然ですが、もし自分のゲノム情報を知ることができるとしたなら、いくらまでなら払おうと思われますか?
アメリカでは現在、いくつかの企業が一般個人を対象としたゲノム解析のサービスを手がけています。それぞれ、サービス内容に違いはあるのですが、お値段はおよそ3~10万円の範囲にあるようです。先日、その一つである「23andMe」から、特定の人について 約2500円でサービスを提供する、というニュースが出されました。(BusinessWeak 2009.3.12)
23andMeの創業者であるAnne氏のパートナーは、Googleの共同創業者であるBrian氏です。今回告知されたサービスはBrian氏の資金助成によるもので、1万人のパーキンソン病患者を対象に、本来399ドルかかる解析を25ドルで行うというものです。
23andMeで提供されているのは、個人間の差異を検出する一塩基多型 (SNPs) 解析で、その結果にはオンラインでアクセスできるようです。実は私自身も以前から利用してみたかったのですが、さすがに気軽に手を出せる価格ではないなと感じていました。今回、対象が限定されているとはいえ、この価格でサービスの提供が行われたという実績は、非常に大きな意味を持つと思います。すぐに、というわけではりありませんが、一般向けのテーラーメイド医療の実現がまた一歩、近くなったようですね。
パーキンソン病という疾患自体も、近年さかんに研究が行われている分野です。発病リスクの検査に限らず、予防や治療など、得られた情報は非常に大きな可能性を持つことになるでしょう。また、このようなサービスは情報の蓄積がその有効性に直結するとも考えられますので、今の段階で多くの情報を蓄えられるということは、将来的な企業価値を高める上でも大きなアドバンテージになります。研究するターゲットについて、また企業戦略のモデルケースとしても、今回のニュースからは多くのことを学ばされたと感じています。
一方で、23andMeに限らず個人向けのゲノム解析サービスは、世界をリードするアメリカにおいても、いまだ多くの問題点を抱えているようです。なんと言っても得られた情報が医療行為に直結しうるだけに、これまでにもいくつかの州で企業に対する警告が出されているそうです。それでも、カリフォルニア州で認可が出されるなど、確実に社会に受け入れられつつあるようです。また、多民族社会であるアメリカにおいては、医療的な価値だけではなく、ゲノム情報から自分のルーツを調べるという点でニーズがあるとのことです。
以下の文献で、現在サービスを展開している3つの企業に注目して、この辺りの事情が報告されています。興味のある方は、実際にサービスを申し込む前に、ぜひ読んでみて下さい。
ところで、Brian氏は個人のブログで、自らのパーキンソン病リスクについてのコメントを公開しています。疾患のリスクを知るということは、万人にとって必ずしも受け入れることができるものではないでしょう。「自身を知る」ために求められるものは、お金よりむしろBrian氏のような考え方なのかもしれませんね。
Kaye, J. (2008) Hum. Mol. Genet. 17(R2): R180-183
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