こんにちは、HMTの大賀拓史です。
先日、鶴岡では天神祭が催されました。「化けもの祭り」とも呼ばれるこのお祭りでは、長襦袢を身にまとった参加者が編みがさと手拭いで顔を隠して「化けもの」に扮し、街を無言で練り歩きながら見物客にお酒やジュースを振る舞います。かつて大宰府に流された菅原道真公を悼みつつ、一方で当時の権力者に身元が分からない様にと、顔を隠してお酒を酌みかわしたのがその由来だとか。聞くところによると、3年間、友人知人に変装を見破られることなく天満宮にお参りができた暁には、願いごとが叶うのだそうです。今年は、どれくらいの方が念願の3度目を達成されたのでしょうか。
ところで、お願いごとというと、何故かやたらと3回という条件がつきますよね。三度目の正直、お三度参り、それから、流れ星に願い事を唱える数も。その内容にもよりますが、願い事を託すのにたったの3回だけ、というのは些か心許なく感じませんか?
さて、科学の世界では実験結果の再現性を確認するため、複数回の実験や検体の採取を行いますが、こちらでも、3回というのが一般的に求められる最小数ではないでしょうか。
ただし、それは実験の条件が厳密にコントロールできる場合のお話。
生き物が相手の場合は、制御しきれない条件のせいで結果がばらついてしまい、その統計的な解釈を行うためにも、もっとたくさんの実験・検体数が必要になります。また、その数についてもいくつ、という決まりがあるわけではなく、それぞれの実験で、目的や結果のばらつき具合を考慮して決めなくてはなりません。
私自身は、これまで実験条件をコントロールしやすい in vitro(試験管内) の実験が多かった人間なので、上記のような実験を計画する時には、毎度頭を悩まされています。特に、メタボロミクスでは複数の代謝分子量を一度に評価できてしまう反面、結果の信頼性を保障するためにはどれくらいの検体数やデータのばらつき具合が求められるのか、慎重に実験デザインを組むことが求められます。幸いHMTには生物統計学の専門家がいるので、時には実験系の甘さを怒られつつも、相談をしています。
単純に実験数・検体数を増やせれば良いのかもしれませんが、実際の研究ではその数に制限があるため、出来る限り少ない数で信頼性を得られるように、実験や検体の条件を揃えることになります。そういった点が考慮された「きれいな」実験結果の論文を見ると、それほど多くない検体数からでも、ちゃんとした考察が導けることを学ばされます。
願い事も実験も、少ない回数でも一度ずつにちゃんとしたものが込められていれば、それ相応の見返りが得られるのかもしれませんね。