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ABC's of Metabolomics

Metabolomics 2010 社長レポート-Metabolomics2010に参加して


今年の学会は2年に1度の植物メタボローム学会との同時開催ということもあり、過去最大の740名の登録がありました。およその内訳は、南北米から100名、アジア100名、残りはヨーロッパが中心で、アフリカ、中近東からの参加もありました。やはりEU中心の学会でしたが、参加国は40数カ国に膨れ上がり、全般に活況でメタボロームの第2ステージの幕開けを実感できた学会でした。今回で3年連続参加したので、最近の変化と言う観点から今年の印象を以下のようにまとめてみました。

オーラルの発表(国別)

開催国(EU諸国)の増加は当然としても、アメリカの低下が気になりました。日本は昨年に続き4件を維持できたが、3件は理研関係者、1件は慶應大学であり、違った研究組織からの発表があるとさらに良かったですね。

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ポスター発表のテーマ

ポスター総数は2倍近く増加し、学会として盛況でした。サイエンスのヨーロッパということもあり、先端技術が増えたことはよい傾向だと思います。どこの国でも1細胞での分析、ミクロ化への飽くなき挑戦がなされていて、興味深かったです。また、昨年は栄養・健康といったテーマが増えて、メタボローム応用の広がりを感じましたが、今年はバイオマーカーや創薬・製薬関係が再び増えてきたので、本来の姿になったと思います。ただ、フラックス解析がもう少し増えると思っていましたが、思ったようには増えていませんでした。

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全体として

昨年くらいから、標準物質に対する取り組みやQA/QCへの取り組みの議論が増えてきています。 この傾向はメタボロミクスが本物になってきた証であると思います。メタボロミクスが単なる比較して総論を論じる技術から、きちんと解析して各論を論じる時代になりつつあることだと思います。研究に使えるのではないかという時代から、使うための改善を進める時代に入ったと感じました。解析プラットフォームが整備されてくれば、アノテーションできるピークが多くなり、結果として今後は代謝経路を論じるポスターが増えてくると思っています。

スポンサーの数が大幅に増えたことも良い傾向で、メタボロームがビジネスになること示唆していると思います。主要分析機器メーカは勢ぞろいして、プロテオミクスの次のブームを創造したいと躍起になってきていました。実際、アジレント・テクノロジー社に聞いてみると、メタボローム解析のために売れている装置は急激に増えているとのことです。

分析技術的な観点から見ると、NMRの発表は少なく、ポスターは植物メタボロームを中心にGC-MSが頑張っていると感じました。CE-MSもNMC(オランダメタボロミクスセンター)が使い始めたこともあって、着実に増加傾向にありました。

今回は米国Metabolon社の存在が全く無く、私としては無気味でした。ブース展示も、ポスター発表も一切なく、一体どうしたのか気になりました。

HMTの社長になって2年半経過しましたが、この2年半のメタボロミクスの普及の勢いは目覚ましくメタボロミクスが本物の技術になったことを実感している今日この頃です。今回の学会でも多くの研究者と話し、バイオロジーを語るのにメタボロミクスは不可欠な存在であり、メタボロミクスを利用しない人は何か大きなチャンスを失うのではないかという価値観を共有することができました。その理由の一つは、メタボロミクスを利用している研究者はすでに他のオミクスを利用しているので、メタボロミクス情報との統合により考察できる範囲が明らかに広がっているからです。

 
来年の学会は第1回目と同様に鶴岡開催が決定しました。日本の誇れる技術の一つであるメタボロミクスの国際学会が再び鶴岡で開催されることはこの上ない喜びです。是非とも皆様と共に、日本の存在感がアピールできる学会にできれば考えておりますので、皆様の積極的なご参加をお願いします。

HMTはこれからも日本のメタボロミクスソリューションプロバイダーとして、バイオ研究者に不可欠は情報が届けられるように日々努めてまいりますので、ご支援をよろしくお願いします。

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メタボロ太郎なう

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