バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第五弾です。
前回に引き続き、2-オキソグルタル酸の供給を増加させる植物を作製して解析した論文の2報目を紹介します。
今回紹介する論文では、解糖系中間体であるホスホエノールピルビン酸からTCA回路中間体であるオキサロ酢酸への反応を触媒する酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ酵素遺伝子を正に調節する転写因子を過剰発現させて、代謝物変動を調べています[1]。この転写因子はトウモロコシでホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ酵素遺伝子の発現を正に調節する転写因子として単離され、この論文ではこの転写因子をモデル植物であるシロイヌナズナで過剰発現させています。この転写因子のターゲットは、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子以外にもあるだろうということは推測できますが、まだ同定されていません。
この論文では、トウモロコシの転写因子を過剰発現させたシロイヌナズナではアミノ酸量およびタンパク質量が増加していることが明らかになりました。また、窒素が十分に存在する培地では生育の向上は見られませんでした。論文上では、低窒素で生育改善したと述べられていますが、十分なデータが載っていないので、その点に関しては、ここでは議論しないことにします。
以上の結果から、アミノ酸などの有機窒素含量を増加させるためには、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを活性化させるのが有効なアプローチであるということが明確になりました。
この知見に関しては、前回紹介した論文でも同様な傾向が見らており、アミノ酸含量を増加させるためには、硝酸イオンの還元を活性化するのではなく、2-オキソグルタル酸の供給を増加させることが必要であることが明らかになりました。
しかしながら、生育の顕著な改善は見られなかったので、2-オキソグルタル酸の供給を上昇させるのはアミノ酸の増加には重要であるが、生育の改善に正の影響を及ぼさないことが分かりました。
それでは、どの代謝経路に着目して遺伝子改変を行えば、植物の生育を向上させることができるのでしょうか?・・・については、次回のブログでお話ししたいと思います。
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