バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第十弾です。前回から植物のストレス耐性向上のメタボロームについてのシリーズです。このシリーズはストレス耐性向上を目指したトランスクリプトームとメタボロームの研究の長所についてのコラムにしようと考えています。
植物のストレス耐性向上のメタボロームの研究の話題に入る前に、最初の数回で、遺伝子発現に着目することによって、植物ストレス耐性向上のメカニズム解明に貢献した一連の研究について紹介します。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第九弾です。今回から新しいシリーズです。
農作物が深刻な被害を受ける主な原因としては、乾燥、低温、塩害などがあります。これらのストレスを受けると、農作物の生産性が著しく低下し、農業的に大きな問題となっています。具体的には、砂漠化による農作地の減少、冷害による農作物の収穫量の劇的な低下などがあります。このような状況下で、モデル植物であるシロイヌナズナやイネを用いて、ストレス応答メカニズムを解明し、ストレス耐性植物を開発することは、重要な課題となっています。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第八弾です。
前回のブログでも触れましたが、大気中の二酸化濃度の状態では、カルビンサイクルの律速段階であると考えられている代謝反応はリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)酵素によって触媒されています。
このRubiscoは、二酸化炭素だけではなく、酸素とも反応します。カルビンサイクルでは二酸化炭素とリブロース1,5-ビスリン酸から二分子の3-ホスホグリセリン酸を生成する一般的によく知られている反応を担っています。また、酸素とリブロース1,5-ビスリン酸から3-ホスホグリセリン酸とホスホグルコール酸を生成する反応も担っています。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第七弾です。
前回のブログでは、カルビンサイクルのフルクトース1,6-ビスリン酸ホスファターゼとセドヘプツロース1,7-ビスリン酸ホスファターゼを過剰発現させた植物体(タバコ)で、二酸化炭素の取り込みが上昇し、スクロースやデンプンレベルが増加し、生育が上昇することを紹介しました。
しかしながら、カルビンサイクルの律速段階は、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)酵素による二酸化炭素を二酸化炭素受容体代謝物に固定する代謝反応であると昔から考えられてきており、この仮説をサポートする結果も多く得られています。そこで、今回のブログでは、Rubiscoを過剰発現させたイネで、二酸化炭素の取り込みや生育について調べた論文についてお話します。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第五弾です。
前回に引き続き、2-オキソグルタル酸の供給を増加させる植物を作製して解析した論文の2報目を紹介します。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第四弾です。
前回のブログでは、無機窒素化合物を有機窒素化合物に変換する代謝経路を活性化するには、硝酸イオンの取り込みおよび変換だけでなく、アミノ基を受け取る炭素骨格としての2-オキソグルタル酸の供給が重要な因子であることを説明しました。
今回と次回のブログでは、2-オキソグルタル酸の供給を増加させると植物の生育にどのような影響を及ぼすのかを解析した論文を1報ずつ紹介します。1つ目の今回は、ジャガイモを用いて変異型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを過剰発現させて代謝がどのように変動したかを調べた論文です[1]。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第三弾です。
前回のブログでは、無機窒素化合物を有機窒素化合物に変換する代謝経路中の1つの反応を担う酵素を過剰発現しても、植物中の有機窒素含量を増加させることができないことを説明しました。今回のブログでは、それでは一体どうすればいいのだろうかということについて何かしら示唆ができればと思っています。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。植物メタブローグ第二弾です。今回からしばらくは植物の生産性を向上させるためにメタボローム解析はどう生かせるかについてお話をしたいと思います。
ヒトは生存に必要な栄養素は主に食品から摂取しています。炭素源としては糖を、窒素源として主にタンパク質およびアミノ酸を摂取しています。ヒト体内で他の代謝物から生合成できないアミノ酸は、必須アミノ酸と言われ、栄養素として摂取しなければなりません。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。これから1年間、植物メタボロームの紹介をしていきますので、よろしくお願いします。
ヒトでは、遺伝子数が約22000あるのに対して、代謝物質の数は約3000で、遺伝子と比べて対象とする数が少ないため、細胞内事象を理解するための解析がしやすいことがメタボローム研究の利点の1つと考えられています。
植物メタボロームでは、逆に代謝物質が約20万種類近くあると推定され、多様性に富んでいることが特徴の1つであると考えられています。…