こんにちは、HMTの菅野隆二です。
10月中旬に慶應大学の曽我先生とアメリカ、ヨーロッパを2週間にわたるメタボロミクスの旅を実現しました。目的はCE-MS技術の海外への普及活動とメタボロミクスビジネスのマーケット調査です。強行軍の2週間でしたが、多くのメタボロミストと情熱的にメタボロームを語り合い、本当に充実した時を過ごすことができました。今回はそこで得たいくつかの“気づき”をお話したいと思います。
ひとつの結論的な気づきは、CE-MS技術でのメタボローム解析は急速に世界で普及していくと確信できたことです。
メタボロームソサエティの重鎮、アメリカのミシガン大学医学部Chris Beecher博士やオランダのライデン大学教授でオランダメタボロミクスセンタ長のThomas Hankemeier博士など多くの研究者が慶應・HMTのCE-MS技術の改善やそのメタボローム解析への応用を高く評価し、今後は連携してその普及に努めることを約束してくれました。Natureの10月2日号で取り上げられたメタボローム特集でCE-MSがメタボローム解析のEmergingな技術として注目されていることにも言及していました>>>。
また、海外マーケット調査のために3社のメガファーマを訪問し、以下のフィードバックを得ました。
- メタボロミクス解析の価値はフェノームに近いことであり、マーカ探索には有利である。
- 対象となる数が少なく、扱いやすい。半面、未知物質が多く、解明ができていない代謝経路もあるが、それらが解決できるとさらに飛躍する。
- 創薬プロセスでメタボロミクスが重大な役割を果たすというプルーフがまだ一般的になっておらず、メタボロームに対する投資に企業間で温度差が見受けられる。
いずれもメタボロミクスに何らかの興味を持っている人からのフィードバックなので若干の片寄りはあるかもしれませんが、現状理解、意見はほぼ共通でした。
大手酵素生産会社も訪問しました。メタボローム解析により、醗酵プロセスがブラックボックスだった時代とは違う研究チャレンジが生まれつつあり、微生物醗酵にはイオン性代謝物質の関わりが多く、CE-MS技術が貢献できる可能性を実感しました。
また、欧米でのメタボローム研究は植物メタボロームが主体でしたが、対象が人、動物に変化してきていることも分かりました。
その他、メタボロミクス2008に出席した時の情報と総合すると、メタボローム解析の市場は着実に大きくなってきており、医薬・診断分野の増加ばかりでなく、食品、醗酵プロセス管理などへの広がりを見せています。これは世界だけではなく、日本でも同じであると思います。
今回のメタボロミクスの旅は、HMTの海外展開加速を決定づけるトリガーとなりました。これからも日本発のメタボローム解析技術を世界に浸透させるべく、さらなる技術開発に努めます。