こんにちわ HMTの大賀です
こちら鶴岡はずいぶん寒くなり、本格的な冬の気配が漂っています。近頃は雨の日が多く、ようやく晴れたかと思いきや、いきなりの夕立にがっかりさせられる、そんな日もあります。
昨日は珍しく、朝から気持ちのいい空がのぞいていました。こちらの地方は、冬になると晴れの日がほとんどないそうですね。(関西出身の私にはちょっとしたカルチャーショックです) せめて今のうちにしっかりと、陽の明るさを楽しんでおきたいものです。
そういえば、前回のコラムでも少し触れましたが、冬になると光が弱まり、植物の光合成量が少なくなるために葉の色が変わるのかもしれない、という説があります。しかし、太陽の光が得られなくなると元気がなくなるのは、なにも植物だけではありません。ほかならぬ私たち人間にとっても、「光を浴びる」ということはとても重要な意味を持つようです。
「体内時計」という言葉をご存知でしょうか?私たちの体の中には、時計の針を見なくても決まった時間 (周期) を計るしくみが備わっています。このメカニズムは人に限らず、動物や植物、シアノバクテリアという微生物からも発見されています。そしてもっとも代表的な体内時計の一つとして、一日の長さを計る「概日リズム」というメカニズムがあります。
概日リズムはいくつもの要素から構成される、とても巧妙なシステムで維持されています。しかし、ネジ巻きの時計と同じように、時々調整をしてやらないと少しずつズレが生じます。そしてそのズレを修正するネジこそが、一定のサイクルで光を浴びること、なのです。(少し面倒な言い方をすると「リズムを維持するために必要な刺激の一つとして、視交叉上核という脳の一部への視覚を通した刺激があることが知られている」そうです。)
この概日リズムがおかしくなると、私たちの体に問題が起こることが近年、色々と見つかっています。例えば、高緯度地域では日照が少なくなる冬の期間だけ、うつ病に似た症状 (冬季うつ病(=季節性情動障害)) が起こりやすいと言われていますし。また季節とは関係ありませんが、「時差ぼけ」という体内時計の異常は、皆さんも経験があるのではないでしょうか?朝起きたときにちゃんと光を浴びる。たったそれだけでも、こういった症状の対処法としては有効なのだそうですよ。
ところで、概日リズムを形成する要素の中には小さな代謝分子、つまりメタボロミクスのターゲットも含まれています。代表的なものとして、脳で働くホルモンのセロトニンやメラトニンが知られていますが、その他にもまだまだ発見される可能性がありそうです。そういえば、先日行われていたメタボロームシンポジウムの中でも、体内の周期的な代謝変動を調べる研究が発表されていました。どうやら代謝というものは「腹時計」以外にも、私たちが知らないところで時を刻んでいるようですね。
概日リズムをはじめとして、脳の研究はまだまだ大きなブラックボックスに隠れた分野ですが、長い歴史をもつ代謝研究の知見とメタボロミクスという最新の技術で、これまでとは違った光を当てることが出来るかもしれませんね。