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ABC's of Metabolomics

メタボロームにも歴史あり


こんにちは HMTの大賀です。

先日、研究所がある山形県庄内地方の伝統芸能「黒川能」を拝観することができました。地域の人々の間でのみ受け継がれてきた神事能で、その歴史は450年以上にもなるそうです。

今回は屋外の、また水上舞台ということもあり、独特の雰囲気を堪能できました。公演の機会はあまり多くありませんが、もしご縁があれば多くの方にも観能してもらいたいと思います。

さて、黒川能の歴史の長さには及びませんが、メタボロームにも歴史あり、です。今回は「メタボローム」という名前 (単語) が使われはじめた時を振り返りたいと思います。


「metabolome」が初めて登場した論文として汎く認められているものに、1998年に発表された S. G. Oliver らの論文があります。

この論文は酵母のゲノムの機能解析 (functional analysis) に関する総説です。遺伝子 (あるいはその産物であるたんぱく質) の機能を発見するためには、その遺伝子が変異や欠損、あるいは過剰に発現した細胞の表現型が有力な情報になります。ところが、実際には変異しても細胞の表現型があまり変わらない「機能未知遺伝子」や、他の遺伝子が機能を代理してしまえるような遺伝子がたくさん見つかっています。

そんな表現型のはっきりした (定性的な) 情報が得られない場合であっても、細胞の様々な性質が“どの程度”変わったかという (定量的な) 情報が得られれば、目的の遺伝子の機能を発見することが出来るかもしれません。

その一つの例として、細胞内の代謝分子プールの定量評価、つまりメタボローム解析が挙げられています。細胞の外からは観察できない表現型を内側の変化から捉える、というイメージでしょうか。
こうしてみると、近年発達したメタボロームも、遺伝子の機能探索という長い歴史が背景にあることに気付かされます。どんな世界でも、素晴らしいものが現在あるのは先達の叡智あってのおかげ、ですね。

Systematic functional analysis of the yeast genome.
Oliver SG, Winson MK, Kell DB, Baganz F. Trends Biotechnol 1998 Vol 16, No 9, pp 373-378.
[PubMed]

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メタボロ太郎なう

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