こんにちは、バイオメディカルグループの篠田です。
いくら食べても太らない人もいれば、お酒も飲まないし、食事も気をつけているのに太ってしまう人もいます。昨今のGWAS解析により、肥満と関連するアレルが発見されてきていますが、では、遺伝的に太りやすい人が運動して、どのくらい効果があるのでしょうか? 先天的に太りやすい人は、痩せることをあきらめたほうが良いのでしょうか?最新のPLoS Medicine誌の研究成果によると、そんなことはなさそうです。
ケンブリッジ大学の疫学研究グループによって、2万人の男女のBMI増加率(3.6年の追跡)に対する、肥満関連アレルと運動の交互作用が調べられました。自己申告方式のアンケート調査により日常の運動レベルを4段階に分け、まず、全く運動しない最下位グループと、その他3グループにおける、BMIと遺伝素因の関連を調べたのが、下図(PLoS MEDICINEウェブサイトより引用)です。
全く運動しない白抜き(◇)のグループでは、肥満アレルが多い(=遺伝素因的に太りやすい)ほど、BMIもどんどん上昇しています。反対に、少しでも運動する黒塗り(■)のグループでは、遺伝素因とBMIの関係は、おだやか/マイルドになっていることがわかります。最も遺伝的に太りやすい、スコア16~17の被験者でも、運動をすることにより、スコア8~9レベルのBMIに保つことができています。
次に、BMIの増加率/アレルと、運動の関係を調べたのが下図(PLoS MEDICINEウェブサイトより引用)です。
中程度に運動する(Moderately active)な群、および運動する(Active)な群では、BMIの増加率/アレルが、負の効果を持っていることがわかります。つまり、遺伝素因を運動が完全に打ち消している、ということです。家系的に太りやすいみなさん、あきらめることはありません!
では、”Moderately active”とは、どの程度の運動のことでしょうか?
本論文によると、日常デスクワークの人だと、1日10分~1時間程度のレクリエーション運動もしくは立ち仕事、日常立ち仕事の人だと、30分以下のレクリエーション運動もしくは他に何もしない、というカテゴリーに該当します。この「30分~1時間程度」というのは、1週間の平均ですので、週末にまとめて運動してもOKです。つまり、遺伝的に太りやすくても、普段立ち仕事ならば、むしろ痩せ傾向にある、ということです。
このように、極めて日常的な環境要因が、遺伝素因を打ち消すほど強い効果を持つことがわかります。今後の肥満・生活習慣病関連のGWAS研究デザインに大きく影響を与える成果の1つと言えるでしょう。
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