研究開発本部の藤森です。今回は、バイオマーカー探索の対象となる「疾患の定義」についてお話したいと思います。
色々な場面で「疾患」「健常群」などの言葉は当たり前のように使われていますが、実は非常に曖昧な言葉です。実際に疾患に罹患しているか、していないかを鑑別する診断マーカーを探索する上で、それらをどう定義するかは結果にも影響を与える重要かつ難解な問題であり、その疾患の専門医と深く議論すべきです。
「疾患の定義」とは言いかえると健常群、疾患群をどの範囲に定めるかであり、
の二つの側面があります。
これだけでは分かりにくいと思いますので具体的に考えてみましょう。…
研究開発本部の藤森です。今回は、バイオマーカー探索の対象となる疾患について考えてみたいと思います。
診断法の開発を目的とした疾患バイオマーカー探索を成功させる上で、3つの大きなポイントがあります。それは、…
研究開発本部の藤森です。2013年10月30日から11月1日まで山形県鶴岡市で行われている「第1回がんと代謝研究会」に参加してきました。
地方都市で交通の便がよいロケーションではなく、また「がんと代謝」という、限定されたテーマでであったにもかかわらず、約300名が参加し、熱い議論が交わされていました。がん領域の最先端の研究をされている著名な先生方も多数参加されており、がん領域の研究でもゲノムから再び代謝に焦点があてられ始めたことが、認識できました。
質量分析計等の技術的進歩により、比較的容易に、主要代謝経路のほとんどの代謝中間体を検出・定量すること(メタボローム解析)ができることにようになったこと、ゲノムに着目をしたがん領域の研究に限界が見え始めたことが、再び、がん領域の研究者が代謝に着目し始めたドライバーになったのではないでしょうか。
一部ではありますが、個人的に非常に印象的だった発表について紹介したいと思います。…
名古屋大学大学院医学系研究科で小児医療について研究をなさっている伊藤嘉規先生にお話を伺いました。
伊藤先生は主に小児科学、ウイルス学の分野で研究を続けていらっしゃいます。2010年にHMTメタボロミクス研究助成を受賞された鳥居ゆか先生も伊藤先生の研究室で研究されています。
―初めに、研究課題について簡単に説明していただけますか?
我々の研究室では主に基礎研究、臨床研究の二つの柱に沿って研究を行っています。…
研究開発本部の藤森です。「メタボロミクスは何が変わったか?」に続いて、今回はメタボロミクスの進化の契機となった論文についてご紹介します。
前回のブログでは、メタボロミクスは「ただ測って可能性を示唆するだけ」の段階から「新しい生物学的知見を明らかにする段階」まで、学問として進化してきたことに触れました。それでは、その契機となったものは何だったのでしょうか?…
こんにちは、HMTの井元淳です。3月なのにすっかり桜が満開ですね。
3月19日、東京事務所で2012年度の先導研究助成の授与式を執り行いました。
2012年度の採択課題についてはこちらをご覧ください。
去年は間違えてパーティー用の目録を購入してしまったので、今年は注意してちゃんと式典用を購入しました。
授与式では採択者のみなさんに一言ずつコメントをいただきました。…
こんにちは、B&Mの篠田です。2009年度よりHMTでは大学院生を対象に助成事業を行ってきました。今回は、初年度に受賞され、助成を受けて行った研究が盛り込まれた杉浦悠毅研究員(浜松医科大学)の研究結果がPLoS ONEに公開されましたのでご紹介します。
イメージング質量分析(IMS)が組織サンプル中の代謝物質の局在を、in situ ハイブリダイゼーションの様に可視化できる一方、CE-MSは1度の分析で代謝中間体まで網羅的かつ定量的に分析できます。…
こんにちは、B&Mの大賀です。気づけばもう2月。実に一月ぶりの更新となってしまいました。
ここ最近は、雪に埋もれて冬眠を...ということは勿論なく、研究に、受託解析のレベルアップに、と相変わらずバタバタしておりました。
前回お知らせした「生活習慣モデル動物のメタボローム解析」に関する研究論文のオンライン版が入手できるようになりました(論文の詳細はHMTウェブサイトでご紹介しています)。年度末を控えて受託解析を検討中の皆様には、ぜひ一度ご覧いただき、メタボローム解析から得られる結果の参考としてご活用いただければ嬉しいです。…
こんにちは、バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。当社の研究員である篠田と共に、福岡県小倉のリーガロイヤルホテルで10月7日(木)から9日(土)まで行なわれました第32回日本生物学的精神医学会に参加してきました。
今回の学会は、精神医学の研究分野において、血液生化学、遺伝学、画像研究などを用いて、生物学的メカニズムに踏み込もうとしている先生方が発表される場でした。HMTの研究員という立場から、精神疾患のバイオマーカーについては一体どこまで分かっているのだろうか?という点に興味を持ち、参加しました。…
バイオマーカー・分子診断事業部の藤森です。前回のがんとメタボロームの続きについてお話したいと思います。
前回は、がん細胞はエネルギー獲得と同時に増殖に必要な細胞内構成成分を生合成するのに有利な代謝を行っていること、グルコースやグルタミンを大量に取り込み、解糖系およびグルタミン分解が活性化されていることをお話しました。
グルコースは解糖系でピルビン酸に変換され、乳酸脱水素酵素によってさらに乳酸に変換されます。グルタミンも、グルタミン酸を経て、2-オキソグルタル酸に変換され、ミトコンドリア内のTCA回路に入り、リンゴ酸が生成されます。生成された一部のリンゴ酸はミトコンドリアから再び細胞質へ出て、リンゴ酸脱水素酵素によってピルビン酸に変換され、グルコース由来のピルビン酸の場合と同様に乳酸に変換されます。そのため、ピルビン酸から乳酸への反応はがん細胞代謝において非常に重要な働きをしています。
がん細胞内で、乳酸蓄積に関して、グルコースとグルタミンがどの程度寄与しているかについては大変興味深い問題で、いずれお話したいと思いますが、今回はピルビン酸から乳酸を生成する乳酸脱水素酵素に着目して、この酵素ががん細胞の増殖に重要であることを示した論文について説明します[1]。…