Metabolite of the Week|キヌレニン

Metabolite of the Weekでは、みなさまの研究にお役立ていただけますよう、代謝物質の機能や役割について紹介をいたします。
今回はキヌレニン(Kynurenine)について紹介をいたします。

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キヌレニン

キヌレニン

  • L-キヌレニンは、必須アミノ酸であるL-トリプトファンの代謝物です。ヒトにおけるトリプトファン代謝では、その大部分がキヌレニンとなって、キヌレニン経路と呼ばれる下流の代謝経路に入ります。
  • トリプトファンはまず、主に肝臓で作られるトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)や、インターフェロンγ(IFN-γ)により誘導されるインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)という酵素により、N’-ホルミルキヌレニンへと代謝されます。その後、N’-ホルミルキヌレニンはキヌレニンホルムアミダーゼの働きによってキヌレニンに代謝されます。
  • IDOは、免疫反応が活性化された際などに高い活性を示すようになります。IDOの活性を確認する目的で、血液中のキヌレニン/トリプトファン比(Kyn/Trp比)が用いられることもあります。
  • キヌレニンは、免疫抑制に重要な役割を果たす芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化にも関与します。がん細胞においてIDOの活性が高くなると、がん微小環境内におけるKyn/Trp比が増加し、免疫抑制状態につながります。このためIDOは、がん免疫療法における創薬標的としても考えられています。
  • キヌレニンを含め、キヌレニン経路によって産生される代謝物の中には、炎症や免疫反応のほか、神経伝達に関与する受容体の調節などの機能が知られているものが含まれます。そのため、うつ病や統合失調症といった精神疾患や、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患などとの関係についても研究が進められています。
  • キヌレニン経路においては、キヌレニンは主に2種の異なる経路によって異なる代謝物質へと代謝されます。一つはキヌレニンからキヌレン酸(Kynurenic acid、KAとも)が産生される経路、もう一つはキヌレニンから3-ヒドロキシキヌレニンが産生された後、いくつかの代謝物質を経由してキノリン酸(Quinolinic acid、QAとも)が産生される経路です。また、”キヌレニン経路”に含まれないことが多いですが、別経路としてキヌレニンからアントラニル酸が産生する経路も存在することが知られています。
  • キヌレン酸(KA)はNMDA型グルタミン酸受容体の働きを阻害し、神経保護に関与することが知られている一方で、キノリン酸(QA)はNMDA型グルタミン酸受容体を活性化させることが知られています。神経変性疾患である多発性硬化症の患者において、これら2つのキヌレニン代謝物の比に変動が生じることが報告されています。
  • キノリン酸は、哺乳類におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のde novo合成につながる重要な代謝産物でもあります。トリプトファンの一部は、キノリン酸を介することで、炎症や感染に対応した細胞のNAD+の補充に回されます。

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