プロテオーム解析とは

 

生体内に存在するタンパク質(Protein)の総体のことをプロテオーム(Proteome)と呼び、それらを解析する学問分野・技術をプロテオミクス・プロテオーム解析と呼びます。

タンパク質は生体構造の形成や遺伝子発現の調節、細胞内シグナルの伝達などを行うとともに、酵素として働くことで代謝において重要な役割を果たすほか、細胞内外における代謝物質の輸送も担っており、「代謝」を考えるうえでは必要不可欠な存在です。

proteomics

生体内においては、生命の設計図とも言えるDNAからメッセンジャーRNA(mRNA)が転写され、そのmRNAの情報が翻訳されることでタンパク質が産生されます。タンパク質の基本となる一次構造はアミノ酸が鎖状につながってできたポリペプチドですが、そこから分子間の相互作用などを通じて三次構造を取るようになり、更にリン酸化などの翻訳後修飾を受けることでタンパク質としての機能をもつようになります。
それゆえ、細胞や組織、ひいては生体の機能がどのように制御されているかを明らかにするためには、タンパク質が「いつ、どこで、どれくらい」発現しているかを明らかにすることが、非常に重要となります。ゲノム解析だけでは得ることができないこうした情報を得られるのがタンパク質の網羅解析、プロテオーム解析です。

タンパク質の解析を行う際にはいくつかの方法が考えられますが、生体内のタンパク質を網羅的に解析しようとする場合には、その手法は限られます。なぜなら、アミノ酸がつながってできた構造をしているタンパク質は理論上その組み合わせが無限とも言えるほか、分子量も様々です。

そこで、質量分析計を用いた網羅解析、プロテオーム解析が有用となります。
タンパク質混合物に対しプロテアーゼ消化を行い、短いペプチドの混合物とした後に、液体クロマトグラフィーによる分離と質量分析計による解析を組み合わせてデータを取得した後、その情報をデータベースと照合することでどのタンパク質由来のペプチドが検出されたのか、すなわちどのタンパク質が試料中に含まれていたのかを解析することが可能です。


 
HMTではプロテオーム受託解析を行う株式会社プロテオバイオロジクスと提携し、最先端のプロテオーム解析サービスをご提供しています。
株式会社プロテオバイオロジクスは、世界トップレベルのプロテオーム解析技術を有するだけでなく、多くの質量分析計を安定して稼働させており、常に最高の解析結果をお客様にお届けすることが可能です。
HMT & Proteobiologics
疾患診断マーカーや薬効予測マーカーといったバイオマーカー探索用途のほか、生体内のタンパク質プロファイルを詳しく知りたい方向けに、用途に応じた解析プランをご用意しております。
ご自身のご研究に最適なプランが不明の場合でも、弊社営業担当がご研究内容をお伺いしてプランをご紹介いたしますので、是非一度ご相談ください。

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サービス概要

液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析計(MS)を組み合わせたLC-MSシステムにより、生体試料中のタンパク質の網羅解析(プロテオーム解析)を行います。
試料中に含まれるタンパク質を幅広く分析する網羅解析のほか、特定のタンパク質のみを対象として分析するターゲット解析もございます。

タンパク質比較定量解析(DIAプロテオーム解析)

DIA(Data Independent Acquisition)法を用いてプロテオーム解析を行います。
DIA法では、存在量に関係なく全ての分子のMS/MSスペクトルを測定するので、高感度定量性の高いデータを取得できます。
解析の条件・使用装置によって三段階のサービスをご用意しております。

  • 標準感度DIAプロテオーム解析
    スクリーニングに最適な標準的解析プラン
    (HeLa細胞におけるタンパク質同定数目安:6,000―8,000)
  • 高感度DIAプロテオーム解析
    高感度化メソッドを用い、微量なタンパク質も検出可能な解析プラン
    (HeLa細胞におけるタンパク質同定数目安:8,000―9,000)
  • 超高感度DIAプロテオーム解析
    高感度化メソッドに加え、使用する質量分析計も高グレードのものを用いる最高感度の解析プラン
    (HeLa細胞におけるタンパク質同定数目安:9,000―10,000)

リン酸化修飾比較定量解析(リン酸化プロテオーム解析)

リン酸化タンパク質の網羅解析を行います。特に、タンパク質中のセリン・スレオニン残基のリン酸化を検出することが可能です。
解析の条件・使用装置によって二段階のサービスをご用意しております。
※チロシン残基のリン酸化については本手法では検出されにくいことから、別途「チロシンリン酸化プロテオーム解析」をご利用ください。

  • 高感度リン酸化プロテオーム解析
    試料の分画を行うことで、微量なリン酸化サイトも検出可能な解析プラン
    (HeLa細胞におけるリン酸化サイト同定数目安:15,000―20,000)
  • 超高感度リン酸化プロテオーム解析
    試料の分画に加え、使用する質量分析計も高グレードのものを用いる超高感度高精度の解析プラン
    TMT MS3 SPSワークフローという、共溶出するタグ化された夾雑ペプチドの影響を削減し、正確な定量を可能とする強力なメソッドを使用します。
    (HeLa細胞におけるリン酸化サイト同定数目安:15,000―20,000)

チロシンリン酸化プロテオーム解析

通常のリン酸化プロテオーム解析では検出の難しいチロシン残基のリン酸化について解析を行います。

  • チロシンリン酸化プロテオーム解析
    リン酸化チロシン抗体を用いて試料の濃縮を行うチロシンリン酸化タンパク質解析プラン
    (HeLa細胞におけるチロシンリン酸化サイト同定数目安:1,500)

ターゲットタンパク質解析

配列が既知のタンパク質(またはUniprotなどのデータベースに登録のあるタンパク質)を対象として、特定タンパク質の定量解析を行います。
抗体が手に入らないタンパク質でも定量が可能なほか、非特異的反応が少ないため高い定量精度での解析をすることができます。
また、一度に数種~数百種類のタンパク質の解析が可能なため、マルチマーカー解析にも最適です。


 

※上記メニュー以外にも特注対応可能な場合がございますので、タンパク質の解析でお困りの場合にはぜひお問い合わせください。

解析基本情報

対象生物種

Uniprotデータベースに登録されている生物種が対象となります。
また、解析結果はUniprotに登録されているタンパク質と照合され報告されます。
 

必要試料量(DIAプロテオーム解析)

組織 0.1 mg
培養細胞 1.0 × 105 cells
血清・血漿 200 μL
血漿・血清中にはアルブミンや免疫グロブリンが多量に含まれるため、血中エクソソームのプロテオーム解析を実施します。エクソソーム精製もお任せください。
培養上清 1 mL(無血清培地のみとなります)
その他試料 ご相談ください(必要タンパク質量目安:1 μg)

 

必要試料量(リン酸化プロテオーム解析)

組織 10 mg
培養細胞 1.0 × 107 cells
その他試料 ご相談ください(必要タンパク質量目安:100 μg)

 

納期

原則として検体到着後6週間程度となりますが、検体数等によって変動する可能性がございます。
また、ターゲットタンパク質定量解析の場合、使用する合成ペプチドの納期によっても前後する可能性がございます。
検体数が多い場合や短納期をご希望の場合はご相談ください。


 

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