こんにちは、B&Mの大賀です。前回は培養細胞・微生物のフラックス研究を紹介してきましたが、今回は多細胞システムの研究成果を3報ご紹介します。
一報目は、HMT研究員藤森の十八番の植物メタボローム研究です。
Hasunuamaらは同位体ラベルを用いて、タバコの葉がCO2を固定化する過程を克明に観察しています。実験環境のコントロールと、適切な測定系の選択により、炭素同化経路のほぼ全ての段階で、同位体ラベルの推移を捉えることができています。興味深いことに、同じ経路に並んだ中間体分子であっても、それぞれプールが置換される速度には差があるそうです。この原因は、細胞内(あるいは組織内)での代謝分子の「局在」ではないかとも考察されています。そのことが証明されれば、細胞区画内を一様な低分子プールと見る古典的なイメージとは、全く異なる景観が見えてくるかもしれません。
2報目は、モデル動物のショウジョウバエです。Fealaらは、低酸素環境に適応したハエとコントロールで筋肉のメタボロームデータを比較し、一次代謝レベルでの違いを観察しました。
彼等はそのデータからフラックスバランス解析を行い、特にピルビン酸代謝の周辺や呼吸鎖での酸素利用に違いがあることを提唱しています。この結果で興味深い点は、他の文献のトランスクリプトーム解析結果で「差がない」とされた部分に変化があったことです。有意差の閾値を調整すると、トランスクリプトームデータの方でも、その周辺に弱いながらまとまった変化が見えてきたそうです。
3報目は、微生物、植物、昆虫と続いて最後はやはり動物、ヒトのフラックス解析です。
Fanらは、ヒト肺がん組織について、なんと体内で同位体ラベル化を行う実験の結果を報告しています。被験者に静脈注射で13Cグルコースを投与し、一定時間後に外科手術でがん組織部と正常組織部を採取して、その比較を行ったそうです。またGC-MSとNMRを併用することで、各ラベル分子の正確な定量と、同時にラベル化部位の同定を達成しています。検出された代謝分子のラベル取り込み速度を評価し、プールサイズでは捉えられなかった分子間の相関関係が顕著になったそうです。その結果、これまで培養細胞をベースとした研究では提示されていなかった、解糖系とTCAサイクルの接点に注目が集まり、そこで働く酵素の活性変化がウェスタンブロッティングで確認されました。
いまアツいメタボローム解析とは? -代謝フラックス解析④と⑤でご紹介した論文はどれもここ2年間で発表されたものです。「in vivo と in vitro」を考えると、代謝のフレームワーク、つまり代謝経路(を構築するゲノム)は同じであっても、そこを流れる本質は、やはり容易には再現できないものでしょう。ただ、その外堀を埋めるためのデータは、確実に増えてきていると感じました。
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