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ABC's of Metabolomics

Metabolomics2009 – バイオメディカルレポート(前編)


バイオメディカルグループの大賀です。先日開催された International Conference of Metabolomics Society に参加してきました。出来るだけ研究者からの視点で、学会の概要と感想をお伝えしたいと思います。

今年の参加者はおよそ 300 人。多すぎない人数ということで参加者同士のコミュニケーションが取りやすく、また顔なじみの参加者同士が多いこともあってか、会場のあちこちで常に活発なディスカッションが繰り広げられていました。また、口頭発表は同時刻に1 演題だけが行われ、会場にぎっしりと並べられたイスはいつも満席でした。 (写真は開場前の、緊張感だけが漂う会場の様子です。) 今回の会期中、カナダはこの季節にしては珍しい快晴続きだったのですが、私が感じた熱気は、天気だけのせいではなかったはずです。

口頭・ポスター共に、発表数が最も多かったのはバイオマーカー探索に関する研究でした。ただし一口にバイオマーカーといっても目的は病気の診断に限らず、薬物毒性や栄養状態、あるいは「健康とされる状態の再定義」など多様で、とにかく生命の様々な側面をメタボロミクスというメガネで見つめ直そう、という大きな流れを感じることができました。

その中でも疾患バイオマーカーの研究は特に盛んで、ガンから精神疾患まで多岐に渡っていました。しかし、今回の発表内容の多くは少数被験者やモデル動物を対象とした基礎研究であり、またその結果も、統計処理で疾患群を区別できた、あるいは疾患群を区別する単一物質をマーカー候補として発見したという段階で、今後は実用化に向けてのバリデーションが求められます。一方で少数ながら、病院と提携して既に実用化を見込んだ臨床研究を進めているグループがありました。この先、広く注目されている疾患に関しては、まさに早いもの勝ちといった、熾烈なマーカー探索の競争が予想されます。

バイオマーカー探索以外では、植物メタボロミクスに関する研究の発表が多くされていました。特に、メタボロミクスによる遺伝子機能の探索 (機能ゲノミクス) は世界中で盛んに行われているようです。今回の学会ではこの分野のトップランナーとして、日本から理研の斉藤先生が招待講演をされていました。また、作物や薬物、嗜好品としての植物生産にメタボロミクスを活用する動きに関しては、欧州、東アジアから研究成果の発表がありました。

微生物分野に関しては、酵母の機能ゲノミクスに関する研究が注目されていました。一方、私が密かに期待していた醗酵や生産に関しては、残念ながらほとんど発表がありませんでした。この分野は日本のお家芸ですので、今後はぜひ、日本の研究者に世界を牽引していただきたいと思っています。

Uk Solar Power Experiment

個人的に注目した分野は、メタボロミクスによる環境調査、です。例えば、土壌調査にはミミズの、水質調査にはミジンコのメタボロミクスが行われていました。土や水の単純な成分組成とは異なり、生体の代謝に反映される成分環境という観点を持つことで、生物にとっての環境というものを定義し直すことができるようです。研究自体はまだ始まったばかりとのことですが、今後の発展と、またその他の生物を使った環境調査への広がりも期待することができます。

Metabolomics2009 – バイオメディカルレポート(後編)では初日に行った口頭発表についてお届けします。

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