こんにちは、B&Mの大賀です。先月まで「いまアツいメタボローム解析とは?」として代謝フラックス解析を取り上げてきましたが、今月からはタイトルを「いまクールなメタボローム解析とは?」に切り替えて、引き続きお届けして参ります。
さて、日本人にとって「秋」で思いつく単語といえば、やはり第1位は「食」なのだとか(gooランキング 他)。秋も深まったこの時節、我々の本能を支配する「食」へのメタボロミクスの取り組みに注目していきたいと思います。
PubMedで論文を探してみると、食品、または栄養学に関するメタボロミクスの成果は2004年頃から少しずつ増えており、特に2008年から著しい伸びています。その中でも近年特に盛んに行われているのが「食物」を摂ったヒトの栄養状態を評価する研究です。
栄養学に関しては幾つかレビューが出ていますが、Scalbertらは、質量分析装置をベースとしたメタボロミクスの活用とその課題を提示しています。測定や解析技術に関してはメタボロミクス一般についての内容がレビューされており、一方、特に栄養学という観点では、スタディデザインの重要性が取り挙げられていました。
例えば、ヒトが対象の試験では個人差が大きいので、同一人から複数回サンプリングを行うことで個人内の変動幅を把握する、等、想定される課題とその対応が提示されています。他にも体液中の代謝分子データから生物学的な意義をどう読み取るか、といった日頃から頭を悩まされるポイントが指摘されており、それらを再認識して整理することができました。
また、ヒトを対象とした試験では血液や尿が主な検体になりますが、Zivkovicらは、体内の各組織のメタボロームを把握することでどんな理解が得られるか、を論じています。特に腸管機能に関しては、我々が体内に持つもう「一つのゲノム」、腸内細菌が消化機能に及ぼす影響に着目し、コメントされていました。
ところで、「メタボロミクスで貴方が昨日何を食べたか当ててみせます」と言ったら、皆さんは信じますか?
Dragstedは「肉食マーカー」としてメタボロミクスを活用できる可能性を論じています。肉類の摂取を反映するマーカーとしては、体液中の総窒素量などが過去に論じられてますが、これらは肉以外の高タンパク質食にも影響を受けてしまいます。
一方、ある種の肉類に特異的な挙動を示す代謝分子として、含硫黄代謝分子やヒスチジン誘導体など複数の代謝分子が知られているそうで、これらを同時に評価することで、肉類特異的、また可能性としては種(獣肉、鶏肉、魚肉など)特異的なマーカーとして評価することができるかもしれません。
生活習慣病の医療現場では、食事コントロールが難しいという意見をよく耳にしますが、いずれ、昨晩のメニューをごまかすことが難しくなるかもしれませんね。。
少し視点を変えて、Chorellらは、異なるエネルギー源食物を摂取して運動を行った男性について血液のメタボロームを評価しています。炭水化物やタンパク質量を反映するマーカーとして、その関与が予想される糖や脂肪酸の他、tRNAやrRNAのターンオーバーを示すと考えられるシュードウリジン等も抽出されています。また、個人の身体能力で集団を分類した場合でも、マーカーとなる指標が見出されるとのことでした。
摂取エネルギー種の違いや身体能力といった点は、インスリン抵抗性や呼吸量などの指標にも反映されますが、個々の代謝分子、あるいはそれらの関連した挙動を把握することで、生体システムの変化に対する応答のより細かな情報が得られることが期待されます。
最近は「個の医療」、あるいは「未病」(症状が表面に出ていないが治療しなければ発症が必須な状態)といったキーワードが注目されており、これからは個人の(病気ではない)健康状態をモニターすることが、今よりも大きな役割を持つと予想されます。既存の血液検査も含めた様々な指標が用いられることになるでしょうが、メタボロミクスから得られる栄養状態の評価も、注目すべき候補の一つではないでしょうか。
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