ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
アジレント・テクノロジー株式会社※1(社長:海老原稔、以下アジレント)と日本のバイオベンチャーであるヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社※2(代表取締役社長:菅野隆二、以下HMT)は本日、メタボローム(代謝物質の総体)の測定から解析まで総合的に支援する、アジレントのCE-TOF MSシステムとHMTのメタボローム分析方法とを統合した「Agilent-HMT CE-TOF MS メタボロームソリューションシステム」の新製品を発売いたしました。
次世代ソリューションシステムの特徴
1. TOF MSのモデルチェンジ
4 GHzのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)測定により、測定時のデータポイント数を4倍アップし、マス分解能、質量精度、ダイナミックレンジが向上し、代謝物質の同定および定量の信頼性が高まりました。
2. 革新的な分析メソッド
旧 | 新 | |
測定モード数 | 3 | 2 |
必要な測定用試薬の種類 | 7 | 4 |
モード切換時のカラム交換 | 要 | 不要 |
測定法の進化により、セットアップにかかる時間を大幅に削減し、サンプルスループットが向上しました。
次世代メタボロームソリューションシステムの詳細
新製品「Agilent-HMT CE-TOF MSメタボロームソリューションシステム」は、両社が2005年6月に共同開発に合意して、開発され2006年5月に発売されたシステムを進化させた製品です。本製品はアジレント製CE-TOF MSと、HMTで新開発したメタボロミクスキット(測定に必要な試薬、カラムのセット)、プロトコルおよびユーザトレーニングなどのアフターサービスをパッケージにした「HMTソリューション ver.2」を組み合わせたシステムです。これを使って生体内の代謝物質の測定することにより、生理状態の解明やバイオマーカーの探索などに応用できます。
-
- TOF MSのモデルチェンジ
Agilent 6220 TOF(Time of Flight)MS は、4 GHzのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)測定方法の採用により、質量精度、質量分解能、感度、スペクトル内ダイナミックレンジのすべてで、卓越した性能を発揮します。主な特徴は下記の通りです。
-
-
- 2 ppm の質量精度により、代謝物質同定の信頼性が向上
- 最大 18000 以上の分解能により、目的化合物を干渉から切り離し、優れた質量精度を実現
- 最大 5桁のスペクトル内ダイナミックレンジにより、他の化合物が高濃度で存在する場合でも、微量の分析対象物を検出
- 新メタボローム測定法の特徴
-
従来は陽イオンモード、陰イオンモード、ヌクレオチドモードの3モードでの測定が必要でしたが、測定法の改良により陽イオンモードおよび陰イオンモードの 2モードでメタボロームの測定が可能になりました。また、これまで測定モードによって2種類のカラムを使い分ける必要がありましたが、今後は1種類のカラムですべての分析に対応できるようになりました。さらに、測定に必要な試薬にも改良を加え、7種類必要だった試薬が4種類になりました。以上より、測定にかかる時間を大幅に軽減し、より迅速なメタボローム解析が可能になりました。
-
- 販売価格と販売目標
Agilent-HMT CE-TOF MSメタボロームソリューションシステムの価格は5200万円で、6月16日より販売を開始いたします。販売はアジレントおよび同社の販売代理店を通じて行います。販売目標は3年間で30システムを見込んでいます。
CE-TOF MSが活用されるメタボロミクス分野について
1. メタボロミクスで世界をリードする日本の研究機関
メタボロミクスは、細胞や生体内に存在する代謝物質を包括的に測定し、生命現象を総体的に理解しようとする研究分野です。
慶應大学先端生命科学研究所※3の曽我教授らのグループはメタボロミクス研究によってバイオマーカーの発見のみならず、その代謝メカニズムの解明にも成功しており、メタボロミクスによるバイオマーカー探索には多くの製薬企業が注目しています。
日本のメタボローム研究への取り組みは早く、科学技術振興機構(JST) 研究開発戦略センター発行の「ライフサイエンス分野科学技術・研究開発の国際比較 2008年度版」で、「ライフサイエンス分野において日本が強い技術」に、メタボロームが選ばれており、本分野での日本の先進性が認められています。
2. CE-MS技術を用いた課題の克服
キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis; CE)と飛行時間型質量分析計(Time-of-Flight Mass Spectrometer; MS)を組み合わせた分析装置であるCE-TOF MSは、高分離能と高分解能、高感度を併せ持ち、イオン性化合物の分析に威力を発揮します。1つの細胞には数千種類もの代謝物質が存在するため、その解析の効率化は大きな課題となっており、CE-TOF MSには、迅速な代謝物質測定実現の期待が寄せられています。現在、HMTでは約1600のピークを一斉に検出することが可能です。
3. 今後の期待
代謝物質や代謝経路はほとんどの生物種で共通であるため、メタボロミクス研究ではトランスクリプトーム(mRNAの総体)やプロテオーム(タンパク質の総体)研究とは異なり、生物種ごとにゲノム情報を入手する必要がありません。メタボローム解析は生物の表現系(疾患などの症状)をより説明しやすいことから、バイオマーカー探索を目的として、この解析法を取り入れる製薬企業が急増しています。本格的なメタボロミクス導入に伴い、インハウスでの分析へのハードルを下げる本製品への需要がますます高まっています。
また、最近では微生物醗酵の分野でも、メタボロミクス研究が盛んに行われています。本製品は、製薬、食品といった分野ばかりではなく、環境、エネルギー、化学などすべての分野のメタボローム研究をサポートします。
お問い合わせ先:
アジレント・テクノロジー株式会社
ライフサイエンス営業本部 小林宏彰
TEL 0120-477-111 FAX 042-660-8676
補足
※1 アジレント・テクノロジー株式会社について
アジレント・テクノロジー(NYSE:A)は、コミュニケーション、エレクトロニクス、ライフサイエンス、化学分析市場における世界のプレミア・メジャメント・カンパニーであり、またテクノロジー・リーダーでもあります。19,000名の従業員を擁し、110カ国以上でビジネスを展開しています。アジレントは、2007年度、54億ドルの売上高を達成しました。
※2 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社について
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT)は、CE-MS法の技術をもとに2003年7月に設立され、今年で5周年を迎えるメタボロミクスのリーディングカンパニーです。CE-TOF MSを利用したメタボローム解析技術で、医薬、機能性食品、発酵プロセスなどの分野で実績を上げています。今後は環境、エネルギー、化学などの分野も視野に入れ、様々な分野での貢献を目指しています。
※3 慶應義塾大学先端生命科学研究所について
先端生命科学研究所は、2001年4月、鶴岡タウンキャンパス(山形県鶴岡市)に設置された本格的なバイオの研究所です。最先端のバイオテクノロジーを用いて生体や微生物の細胞活動を総体的に計測・分析し、コンピュータで解析・シミュレーションして医療や食品発酵などの分野に応用しています。2008年6月にメタボロミクス研究をさらに促進する目的で「メタボロームコンソーシアム※4」を設立しました。
※4 メタボロームコンソーシアムについて
「メタボロームコンソーシアム」に参加することにより、慶應大学が開発したCE-TOF MSのメタボロームデータ解析用ソフトウェア「MasterHands」の使用権が得られるほか、代謝物質データベース(約500化合物)の利用、ソフトウェアのセットアップと取扱説明等のサポートを受けることができます。
このニュースは以下のメディアでも報道されました。
・日経ネット
・山形新聞 6/17 朝刊 4面(707.8KB)[93clicks]
・日刊工業新聞 6/18 9面