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日程・場所
場所 | 日時 | 定員 | ||
品川(東京) | 6月30日(火) 13:40~16:20(受付開始13:30~) |
50名 |
プログラム
13:40~13:45 | ごあいさつ |
13:45~14:30 | 肥満による肝がん促進作用 -腸内細菌代謝物の関与- 東京理科大学理工学部 教授 大谷 直子先生 |
14:30~15:15 | 腸内細菌の研究におけるメタボローム解析の活用 -“良い”データを得るためのポイントと実践例- ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 戸松 創 |
15:15~15:35 | コーヒーブレイク |
15:35~16:20 | 腸内細菌叢由来代謝産物による生体修飾機構 慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任准教授 福田 真嗣先生 |
プログラムは予告なく変更することがあります。変更した場合は当ウェブサイトおよびご登録いただいたアドレスまでご連絡いたします。
概要
日時 | 6月30日(火)13:40-16:20 (受付開始13:30~) |
会場 | AP品川10階 Dルーム |
住所 | 〒108-0074 東京都港区高輪3-25-23 京急第2ビル |
アクセス | JR・京急 品川駅高輪口徒歩約3分 AP品川 アクセスマップ 大きな地図で見る |
定員 | 50名 |
参加費 | 無料(事前登録をお願いします) |
講演要旨
肥満による肝がん促進作用 -腸内細菌代謝物の関与-
大谷 直子 近年、肥満は糖尿病や心筋梗塞だけでなく、大腸がん、肝がん等、様々ながんのリスクファクターであることが指摘されている。しかし、その分子メカニズムの詳細は十分には明らかになっていない。 今回我々は、全身性の発癌モデルマウスを用いて、肥満により肝がんの発症が著しく増加することを見出した。興味深いことに、肥満すると、2次胆汁酸を産生する腸内細菌が増加し、体内の2次胆汁酸であるデオキシコール酸(DCA)の量が増え、これにより腸肝循環を介して肝臓の間質に存在する肝星細胞が「細胞老化」を起こすことが明らかになった。 「細胞老化」とはもともと、細胞に強いDNA損傷が生じた際に発動される生体防御機構(不可逆的細胞増殖停止)である。しかし最近、細胞老化をおこすと細胞が死滅せず長期間生存し、細胞老化関連分泌因子(SASP因子)と呼ばれる様々な炎症性サイトカインやプロテアーゼ等を分泌することが示されている。実際我々の系でも、DCAにより細胞老化を起こした肝星細胞は発がん促進作用のある炎症性サイトカイン等のSASP因子を分泌することで、周囲の肝実質細胞のがん化を促進しやすい微小環境を形成することが明らかになった。 さらに臨床サンプルを用いた解析から、同様のメカニズムがヒトの肥満に伴う肝がんの発症に関与している可能性も示された。本研究により肥満に伴う肝がんの発症メカニズムの一端が明らかになったと考えられる。これらの結果から、今後、DCA産生菌の増殖を抑制することが、肝がんの予防につながる可能性が期待される。 |
腸内細菌の研究におけるメタボローム解析の活用 -“良い”データを得るためのポイントと実践例-
戸松 創 近年の分析技術の進歩により、ある時点での生体の状態を網羅的に解析する”オミクス”研究がより身近なものとなった。代謝産物を網羅的に分析するメタボロミクスはその瞬間における生体内環境を化合物の変動として描画するものであり、たとえば生体内環境を構成する腸内フローラを対象としたメタゲノミクスによる微生物集団の分析と組み合わせることで、腸内環境を分子レベルで記述することができる。 このようにメタボローム解析は強力な研究ツールであるが、いざ実践となるとなかなか手を出しにくいと捉えられがちである。その理由としては、メタボローム分析を行う機器を揃えるコストが大きいこと、多変量の分析データの解析が困難であることなどが挙げられる。実際にはこれらの問題は受託解析を活用することによって解決することが可能であり、メタボローム解析を始めるハードルは高いものではない。 一方で、初めて取り組む分析に対して抱く、きちんと測定データを得られるかという不安についてはなかなか解消することが難しい。とくに、研究者自身で測定を繰り返すことによるトライ&エラーの機会が少ないオミクス解析では、ノウハウの蓄積やその伝授が困難であることが多い。 本講演では、腸内細菌の研究においてメタボローム解析を活用した事例を紹介しつつ、受託によるメタボローム解析の経験から見出された”良い”データを得るためのポイントについて論じたい。 |
腸内細菌叢由来代謝産物による生体修飾機構
福田 真嗣 ヒトの腸管内には数百種類以上でおよそ100兆個にもおよぶ腸内細菌が生息しており、これら腸内細菌叢は宿主腸管細胞群と相互作用することで、複雑な腸内生態系、すなわち「腸内エコシステム」を形成している。近年、腸内エコシステムのバランスが宿主の恒常性維持に重要であり、そのバランスの破綻は、炎症性腸疾患や大腸癌などの腸そのものの疾患に加えて、自己免疫疾患や代謝疾患といった全身性の疾患に繋がることが報告されている。 われわれはこれまでに、腸内細菌叢の遺伝子地図と代謝動態に着目したメタボロゲノミクスを基盤とする統合オミクス解析技術を構築し、腸内細菌叢から産生される酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が、それぞれ腸管上皮細胞のバリア機能を高めて腸管感染症を予防することや(Nature, 469: 543-547, 2011)、免疫応答を抑制する制御性T細胞の分化を促すことで、大腸炎を抑制できることを明らかにした(Nature 504: 446-450, 2013)。また、便秘薬摂取による腸内環境改善が、慢性腎臓病の悪化抑制に寄与することや(J Am Soc Nephrol, in press)、加齢に伴う腸内エコシステム変化の分子機構の一旦も明らかにした。 本講演では、われわれの研究成果や近年の腸内環境研究の動向について概説するとともに、腸内エコシステムの人為的修飾による新たな健康維持や疾患治療・予防方法創出の可能性についても議論したい。 |