Metabolite of the Week|カルニチン

Metabolite of the Weekでは、みなさまの研究にお役立ていただけますよう、代謝物質の機能や役割について紹介をいたします。
今回はカルニチン(Carnitine)について紹介をいたします。

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カルニチン

カルニチン

  • カルニチンは、四級アンモニウム基とカルボキシル基を有する代謝物質です。不斉炭素をもつことから、L体とD体が存在します。
  • カルニチンは食餌から摂取されるほか、必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから生合成されます。メチオニンに由来するメチル基がリジンに付与されてトリメチルリジンとなった後にカルニチンへと代謝されていくことから、カルニチンの炭素骨格はリジンに由来します。
  • カルニチンの大部分は筋肉組織や心臓などに貯蔵されています。
  • 脂肪酸とカルニチンが結合した形の代謝物質であるアシルカルニチンは、生体内の脂肪酸輸送において非常に重要な役割を果たします。脂肪酸は細胞質からミトコンドリアマトリクスに輸送され、β酸化されることでアセチルCoAが得られエネルギー産生に寄与しますが、長鎖脂肪酸(Long chain fatty acid, LCFA)はそのままではミトコンドリア内膜を通過することができないため、アシルカルニチンへと変換されてから輸送されます。
  • エネルギー源となるLCFAは、ミトコンドリア外膜に存在するアシルCoA合成酵素(脂肪酸アシルCoA合成酵素、LCFA-CoAリガーゼなどとも)によってCoAが付加された後、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ(CPT1、カルニチンアシルCoAトランスフェラーゼⅠ, CAT1とも)によってアシルカルニチンに変換されます。ミトコンドリア内に輸送されたアシルカルニチンは、その後カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ(CPT2)の働きによってアシルCoAとカルニチンにわかれ、アシルCoAはβ酸化を受けてアセチルCoAへと代謝されていきます。こうしたカルニチンによる輸送系はカルニチンシャトルと呼ばれます。
  • 短鎖脂肪酸(Short chain fatty acid, SCFA)や一部の中鎖脂肪酸(Medium chain fatty acid, MCFA)は、カルニチンによる輸送を必要とせずともミトコンドリア内膜を通過することができます。
  • カルニチンは、ミトコンドリア内の遊離型CoAとアシルCoA(アセチルCoA)の比を調節することで、TCA回路などに関連する酵素の活性を調節することが考えられています。また他にも、抗炎症作用や抗酸化機能、インスリン感受性の改善や生体膜安定性の向上といった機能も有することが報告されています。
  • カルニチンやアシルカルニチンはミトコンドリアの機能と密接に関与していることから、2型糖尿病やがんなど様々な疾患におけるバイオマーカーとしての利用についても研究が進められています。また、L-カルニチンやアセチル-L-カルニチン(ALCAR)の投与によって病態の改善を目指す研究も多く報告されています。

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