Metabolite of the Weekでは、みなさまの研究にお役立ていただけますよう、代謝物質の機能や役割について紹介をいたします。
今回はプトレシン(Putrescine)について紹介をいたします。
プトレシン
- プトレシンは分子内にアミノ基を2つ以上持つ炭化水素であるポリアミンのひとつです。代表的な他のポリアミンとしてスペルミジンとスペルミンが挙げられます。プトレシンの炭素鎖(炭素数4)はスペルミジン(炭素数7)やスペルミン(炭素数10)と比べて短く、構造が単純なポリアミンといえます。
- プトレシンの合成経路としてよく知られているのが、アルギニンがオルニチンに代謝された後、プトレシンに変換される経路です。オルニチンからプトレシンが産生される際には、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)が働きます。
- 他のプトレシン産生経路として、アルギニンがアグマチンに変換された後にプトレシンへと代謝される経路も知られています。アルギニンからアグマチンが産生する反応は、アルギニン脱炭酸酵素(ADC)という酵素が触媒します。その後、アグマチンからプトレシンへの反応は、アグマチナーゼによってアグマチンが尿素とプトレシンに分解される経路と、アグマチンデイミナーゼ(アグマチンイミノヒドロキシラーゼ、AIHとも)によってN-カルバモイルプトレシンが産生し、その後プトレシンとなる経路とが知られています。これらの反応は腸内細菌も含めた微生物などにおいてよく知られていますが、前者の経路については近年哺乳類の細胞においても反応が起こりうることが報告されています。
- プトレシンは他のポリアミンであるスペルミジンとスペルミンの合成の起点となります。スペルミジン合成酵素によってプトレシンからスペルミジンが、スペルミン合成酵素によってスペルミジンからスペルミンが産生されますが、これらの反応は同様の機構を有し、decarboxylated SAM(dcSAM、S-アデノシルメチオニンアミンなどとも)を基質として利用します。
- モノアミンオキシダーゼ(MAO)などを介してプトレシンからγ-アミノ酪酸(GABA)が産生される経路も知られています。
- プトレシンを含むポリアミン類は細胞の増殖や分裂において必要な因子であることが知られています。また、ポリアミン類は老化の過程で減少していくことが報告されており、老化に伴う記憶力の低下との関係も研究されています。
- がん細胞においてポリアミン類が蓄積しているという報告や、アルツハイマー病やパーキンソン病といった疾患でポリアミン関連代謝に変動が生じているという報告もあり、こうした疾患におけるポリアミン類の役割についても研究が進められています。
- プトレシンは植物においても重要な役割を果たしており、胚形成能、根の成長、花の成長、果実の成熟やプログラム細胞死などに関与するほか、生物的および非生物的な様々なストレスに対する応答にも寄与していることが知られています。植物においては前述のプトレシン合成経路だけでなく、シトルリンからプトレシンが産生される経路も近年報告されており、プトレシンの重要性が垣間見えます。
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