メタボローム解析により腋臭(ワキのニオイ)のタイプを判別 ― 腋臭のタイプに影響すると考えられる成分を発見しニオイタイプのパターン化に成功 ―

研究開発型バイオベンチャーのヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社※1(本社・山形県鶴岡市、代表取締役社長・菅野 隆二、以下HMT)は、株式会社マンダム※2(本社・大阪府大阪市、社長執行役員・西村元延、以下マンダム)との共同研究により、日本人成人男性のワキ汗から300以上の成分をメタボローム解析※3によって検出することに成功しました。さらに、これらの中には腋臭のタイプに影響すると考えられる成分が複数存在し、特定の成分の量を測定するだけで腋臭のニオイタイプを判別できる可能性を見出しました。

今後マンダムでは、この新技術を様々なニオイタイプにも対応可能な新規デオドラント剤の開発に応用していく予定です。

腋臭タイプと特徴的な成分

臭気評価により、日本人男性の腋臭を大きく3つのタイプ(A型:酸っぱいニオイ、C型:カレーのスパイス様のニオイ、M型:ミルクのようなニオイ)に分類し、各腋臭タイプを持つ日本人男性のワキから汗を採取し、汗中の成分を網羅的に解析できるCE-TOFMS※4を用いたメタボローム解析を行いました。

その結果、有機酸やアミノ酸を含む300以上の成分が検出され、このうち122種が同定されました。さらに、これらの成分を詳細に解析することで、A型には4成分、C型には20成分の特徴的な成分が存在することを明らかにしました。この成分の中には、既に腋臭との関連が報告されている成分と未だ報告のない成分が多数含まれており、未報告の化合物についてもA型、C型腋臭の発生に関与している可能性が示唆されました。

決定木解析による腋臭タイプの分類

決定木A型、C型の腋臭のマーカー成分の探索を目的として、疾患のバイオマーカー検出などに利用される統計解析手法の一つである決定木解析※5を行いました。その結果、特定の汗成分No.110の量が規定値より多いときC型腋臭をA型・M型から区分し、さらに特定の汗成分No.030の量が規定値より多いときA型腋臭をM型から区分することができました(左図、クリックで拡大)。

このことから汗成分No.110はC型腋臭、汗成分No.030はA型腋臭のキー成分であることが考えられ、これまでのヒトの嗅覚を基にした分類ではなく、特定の汗成分を定量することで、個々の腋臭タイプを分類できることが示唆されました。

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本研究は、体臭の原因となる「汗」も「血液」や「尿」と同様に代謝産物であるという観点から、腋臭タイプ毎に特徴的な汗成分を網羅的に解析したものであり、各腋臭タイプに特異的な汗成分やニオイ発生経路の解明に繋がる研究です。また、ヒトの皮膚上の代謝物についてもメタボローム解析が可能であることを示した初めての研究報告でもあります。ヒト皮膚上のイオン性代謝物を高感度・高分離に測定できるCE-TOFMSメタボローム解析技術は、今後益々化粧品の研究開発に応用されていくと予想されます。

本成果の一部は、日本味と匂学会第44回大会(平成22年9月8日~10日、福岡)、及び第5回メタボロームシンポジウム(平成22年9月9日~11日、山形)にて発表し、日本味と匂誌(17巻3号、2010年)に掲載されました。

 

プロファイル

※1 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社について
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT)は、CE-MS法の技術をもとに2003年7月に設立され、メタボロミクスのリーディングカンパニーです。主な事業内容はCE-TOF MSを利用したメタボローム受託解析で、メタボローム解析技術を用いたバイオマーカー探索のほか、医薬、機能性食品、発酵プロセスの最適化などの分野で実績を上げています。今後は環境、エネルギー、化学などの分野も視野に入れ、幅広い分野での貢献を目指しています。https://humanmetabolome.com/jpn/

※2 株式会社マンダムについて
株式会社マンダムは、1927年に創業し、主力ブランド「ギャツビー」などの男性化粧品をはじめ、女性化粧品「ルシードエル」などを展開する、国内における男性化粧品市場トップシェアを誇る化粧品メーカーです。現在では日本をはじめとしたアジア地域で広く展開しています。長年にわたる男性化粧品に関わる研究において、頭髪や皮膚、体臭に対する独自の研究に取り組み、業界における差別性を高めるとともに、生活者にとっての「新しさ」や「快適さ」を追求し、技術と完成の融合を目指した研究に取り組んでいます。
http://www.mandom.co.jp/index.html

※3 メタボローム解析
メタボローム解析(メタボロミクス)は、細胞や生体内に存在するアミノ酸や糖、脂質などの代謝物質を網羅的に測定し、生命現象を総合的に理解しようとする研究分野です。遺伝子を解析するジェノミクス、たんぱく質を解析するプロテオミクスなどとともに、生命科学における解析手法のひとつとして注目されています。

※4 CE-TOFMS
キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis; CE)と飛行時間型質量分析計(Time-of-Flight Mass Spectrometer; TOFMS)を組み合わせた分析装置であるCE-TOFMSは、高分離能と高分解能、高感度を併せ持ち、イオン性化合物の分析に威力を発揮します。細胞内の代謝物はほとんどがイオン性化合物であるため、生命科学研究に適しています。1つの細胞には数千種類もの代謝物質が存在するため、その解析の効率化は大きな課題となっており、CE-TOFMSには、迅速な代謝物質測定実現の期待が寄せられています。

※5 決定木解析
複数のグループの中から予め指定した特定領域にグループ分けしたい場合に、複数の変数から最適な変数を決定し、分類する統計解析手法で、疾患のバイオマーカー探索などに応用されています。

※このニュースについてのお問い合わせ
営業・マーケティング部 井元
TEL: 03-3551-2180

 

このニュースは以下のメディアでも報道されました

・毎日新聞 8月31日付 [毎日jp]

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