バイオインフォマティクスグループの篠田です。学会のレポートをします。
HMTは昨年に引き続きスポンサーブースを出したのですが、隣にはアルバータ大のグループが立ち上げたPANAMPという受託分析の会社がブースを出すなど、裾野の広がりを感じました。
注目した発表は、デューク大学のグループのもので、うつ病患者を、SSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害剤)が有効なグループと無効なグループにわけ、有効か無効かを事前に見分けるバイオマーカーを探索する研究です。…
バイオメディカルグループの大賀です。International Conference of Metabolomics Society レポートの後編です。前編はこちら。
世界的なメタボロミクスの動きとしては、大規模なコホート研究が始まりつつあることを強く感じました。イギリスの Manchester大学が主導するHUSERMETプロジェクトでは、3000 人以上の検体採取を既に完了したそうです。また、カナダの Alberta 大学が主導するプロジェクトでは 50,000 人の成人を対象とした栄養学的な研究が開始されているそうです。メタボロームの個人差や日間差をきちんと把握するためには、どうしても数千・数万人規模の研究が必要になります。上記のコホート研究から得られた結果は、今後のメタボロミクス研究において重要な基礎データを提供してくれるはずです。また、 Manchester 大学のプロジェクトには複数の海外大手製薬メーカーが参加しており、メタボロミクス研究から大きな産業価値が生み出されることが期待されます。…
バイオメディカルグループの大賀です。先日開催された International Conference of Metabolomics Society に参加してきました。出来るだけ研究者からの視点で、学会の概要と感想をお伝えしたいと思います。
今年の参加者はおよそ 300 人。多すぎない人数ということで参加者同士のコミュニケーションが取りやすく、また顔なじみの参加者同士が多いこともあってか、会場のあちこちで常に活発なディスカッションが繰り広げられていました。また、口頭発表は同時刻に1 演題だけが行われ、会場にぎっしりと並べられたイスはいつも満席でした。 (写真は開場前の、緊張感だけが漂う会場の様子です。) 今回の会期中、カナダはこの季節にしては珍しい快晴続きだったのですが、私が感じた熱気は、天気だけのせいではなかったはずです。
口頭・ポスター共に、発表数が最も多かったのはバイオマーカー探索に関する研究でした。ただし一口にバイオマーカーといっても目的は病気の診断に限らず、薬物毒性や栄養状態、あるいは「健康とされる状態の再定義」など多様で、とにかく生命の様々な側面をメタボロミクスというメガネで見つめ直そう、という大きな流れを感じることができました。
その中でも疾患バイオマーカーの研究は特に盛んで、ガンから精神疾患まで多岐に渡っていました。しかし、今回の発表内容の多くは少数被験者やモデル動物を対象とした基礎研究であり、またその結果も、統計処理で疾患群を区別できた、あるいは疾患群を区別する単一物質をマーカー候補として発見したという段階で、今後は実用化に向けてのバリデーションが求められます。一方で少数ながら、病院と提携して既に実用化を見込んだ臨床研究を進めているグループがありました。この先、広く注目されている疾患に関しては、まさに早いもの勝ちといった、熾烈なマーカー探索の競争が予想されます。
バイオマーカー探索以外では、植物メタボロミクスに関する研究の発表が多くされていました。特に、メタボロミクスによる遺伝子機能の探索 (機能ゲノミクス) は世界中で盛んに行われているようです。今回の学会ではこの分野のトップランナーとして、日本から理研の斉藤先生が招待講演をされていました。また、作物や薬物、嗜好品としての植物生産にメタボロミクスを活用する動きに関しては、欧州、東アジアから研究成果の発表がありました。
微生物分野に関しては、酵母の機能ゲノミクスに関する研究が注目されていました。一方、私が密かに期待していた醗酵や生産に関しては、残念ながらほとんど発表がありませんでした。この分野は日本のお家芸ですので、今後はぜひ、日本の研究者に世界を牽引していただきたいと思っています。
個人的に注目した分野は、メタボロミクスによる環境調査、です。例えば、土壌調査にはミミズの、水質調査にはミジンコのメタボロミクスが行われていました。土や水の単純な成分組成とは異なり、生体の代謝に反映される成分環境という観点を持つことで、生物にとっての環境というものを定義し直すことができるようです。研究自体はまだ始まったばかりとのことですが、今後の発展と、またその他の生物を使った環境調査への広がりも期待することができます。
Metabolomics2009 – バイオメディカルレポート(後編)では初日に行った口頭発表についてお届けします。
Metabolomics2009 その他のレポート
–社長レポート
–バイオインフォマティクスレポート
-バイオメディカルレポート後編
–出展レポート
–国別発表数と発表テーマ
Metabolomics2008のレポートはこちらから
– 発表の傾向
– 社長レポート…
社長の菅野です。8月31日から9月2日にかけて恒例のメタボロミクスソサイティ主催の学会がカナダのエドモントンで開催されました。現地で感じたことをお伝えしますのでそのフレーバーを感じていただけたら幸いです。
参加者はカナダということもあって若干減ったようですが、メタボロミクスの拡大の勢いはすさまじく、まさに旬を迎えた技術というところでしょうか?…
こんにちは。バイオメディカルの大橋由明です。
3月末に1週間、ヨーロッパ各地でメタボロミクスを語って参りました。
大手の食品・製薬・分析機器会社・大学を回り、さらにNVMS-BSMS 2009というベネルクス質量分析国際会議(オランダ質量分析学会とベルギー質量分析学会の合同会議)でポスター発表を行いました。スイス、ドイツ、オランダ、フランスの順にヨーロッパ大陸を縦に横にと移動の毎日でしたが、ヨーロッパの研究者がメタボロミクスに寄せる期待を大いに感じる旅となりました。今回のブログでは、会議の報告と、食べ物の話題などを2回に渡ってお伝えします。ちょっと研究の手を休めて、お付き合いください。…
こんにちは HMTの大賀拓史です。
今年はすでに関東と九州で開花宣言が出たそうですね。鶴岡も気持ち良い晴れの日が多くなってきましたが、まだ時折、思い出したかのように雪が降ったりもします。
さて突然ですが、もし自分のゲノム情報を知ることができるとしたなら、いくらまでなら払おうと思われますか?…
こんにちは、HMTの大賀拓史です。
アメリカ合衆国ではいよいよ、新しい大統領の時代、新しい政治が始まりましたね。経済問題や国際政治など、かの大国がどう変わっていくのか気になる点はたくさんありますが、個人的には、新しい政府がサイエンスに与える影響、という点が興味深いところです。
近代の歴史を振り返ると、宇宙開発や胚細胞の研究など、それぞれの時代でアメリカという国家の方針、あるいは大統領の意見は、世界の科学研究の方向性に大きな影響を及ぼしてきたように思います。もちろん、これまでも現在も、世界の研究の方向性がアメリカ一国で決まる、というようなものではありませんし、今後もそうだろうと思います。それでも、やはり今後のサイエンスの方向性や流行を考えてみるとき、かの国の政策が持つ影響力は、大きなものではないでしょうか。…
こんにちは。バイオメディカルグループの大橋です。
世界の叡智が結集するボストンで、今年のMetabolomics 2008は開催されました。2年前に続いて2度目のボストン開催ですが、今回は街の中心地、パブリックガーデンを望むバックベイエリアでの開催。お昼はおしゃれなカフェで一息つくことができます。
さて、メタボロミクスです。…
こんにちは HMTの大賀です
Metabolomics 2008のレポートが届いていますね。私自身は残念ながら参加していないのですが、内容を伝え聞くだけでも勉強になります。
ところで、Metabolomics 2008を主催している Metabolomics Society は、メタボローム分野における主要コミュニティの一つですが、その目標の一つに、メタボロミクスの「世界標準」を決める、ということがあるそうです。…
HMTの研究開発部門、バイオインフォマティクスグループの篠田です。
9月2日から6日までボストンで行われたMetabolomics 2008に参加して参りました。ブースにお越しくださった皆様、ありがとうございます。
社長に引き続き、バイオインフォマティクスの視点からMetabolomics 2008をレポートしたいとおもいます。…