論文紹介

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[第2回マルチオミクス] プロテオミクス技術はどのくらいのタンパク質を明らかにするか?

バイオメディカルグループの篠田です。マルチオミクスシリーズ第三弾として、プロテオミクスについて取り上げます。

質量分析計の発達により、一度に数千個のタンパク質を同定した論文が普通になり、さらにSILAC法を代表とする、複数種類の安定同位体アミノ酸を培養細胞に取り込ませピークを比較する方法で、定量的解析もできるようになりました。ノンコーディングRNAもあるとは言え、タンパク質が生命システムの主役であることを考えると、すでに我々は生命の部品カタログの完成に近づいているように思えますが、実際のところはどうなのでしょうか? 最新の論文から、プロテオミクス技術でどのくらいのタンパク質が見えるのか、まとめてみました。…

[第1回:マルチオミクス] ポストゲノムと次世代シーケンサー(後編)

バイオメディカルグループの篠田です。ポストゲノムがもたらした次世代シーケンサーについて・後編です。前編はこちらから。前編では次世代シーケンサー以前のシーケンシング法について触れました。後編ではいよいよ次世代シーケンサーについてです。シーケンサーの次世代化・超ハイスループット化はどのように実現されたのでしょうか?各社で方法は異なりますが、コンセプトは共通です。…

[第1回:マルチオミクス] ポストゲノムと次世代シーケンサー(前編)

バイオメディカルグループの篠田です。今回は、ゲノミクス、話題の次世代シーケンサーについてです。

次世代シーケンサの開発競争は激しく、ロシュの454、イルミナ社のGenome Analyzer、アプライド社のSOLiDなどが競っており、最新の情報に追いつくだけでも大変なように感じます。シーケンスやPCRの原理も各社で異なります。

しかし、基本となる「コンセプト」は、とても似通っています。…

夏のたのしみ ― ビールのメタボロミクス

こんにちは、HMT の大賀です。なんだかご無沙汰しておりました。

こちら鶴岡では、庄内名物の「だだちゃまめ」が美味しい季節になりました。見た目は普通の枝豆なのですが、一口食べるとその濃厚な味わいにびっくりですよ。お取り寄せで味わうことも出来るようですが、できれば現地で夏の景色と一緒に楽しんでいただきたいものです。

さて、枝豆といえばそのパートナーは、やっぱりビールでしょうか。いやぁ、ビールが美味しい季節になりましたね。

ご存知の方も多いかと思いますが、ビールは酵母の醗酵、つまり代謝によって生み出される飲み物です。原料のでんぷんが分解されて小さな糖が作られると、酵母はそこから化学的なエネルギーを取り出すための代謝を動かします。

その際に、酵母にとっての副産物としてエタノールが作られるのですが、人間にしてみればこれこそが大いなる恵み。ビールが発見されたのは古代エジプトという説があるそうですが、その時代の人達にはそんな原理なんて分かってなかったでしょうね。醗酵食品の多くに当てはまるのことなのですが、初めてビールを口にしたチャレンジャーは、本当に偉大です。…

シロイヌナズナと統合オミクス

今年入社した分析グループの藤森玉輝です。

博士研究員の時は、DNAマイクロアレイやアジレント社のCE-MSを使って植物の一次代謝の研究をしていました。植物のメタボロミクスの研究成果は、生産性の高い農作物の作製、薬学的に有用な物質の生産、環境浄化など非常に重要かつ多様な分野に生かすことができる可能性を秘めており、大変興味深いです。

これからは植物の代謝物に関する様々な研究を紹介していく予定にしていますのでよろしくお願いします。

生命現象を理解するためにはメタボロミクスが重要であることは当然ですが、さらにトランスクリプトミクスと組み合わせることで、理解をより深めることができます。

しかしながら、統合オミクスの力を最大限に発揮した研究例はまだ少なく、現状ではトランスクリプトミクスとメタボロミクスをして考察する論文が標準的です。これは、統合オミクスを駆使してエレガントな研究を行う方法がまだ確立されていないからです。

統合オミクスの研究方法については今後も考え続けていかなければいけませんが、まず統合オミクスとして成功した論文を読んで学ぶのが誰にでもできる一番簡単な道です。そこで、今回は4年前の論文になりますが、理化学研究所植物センターのグループがモデル植物であるシロイヌナズナで統合オミクスをエレガントに使った研究を紹介したいと思います。…

[第2回メタボロミクスと統計解析] メタボロームデータと多変量解析

バイオメディカルグループ(統計解析)の山本博之です。

細胞内での現象はほとんどの場合、1つの代謝物質によって説明されることはなく、複数の代謝物質とそのネットワークによって説明されます。よって、複数の変数(代謝物質)を使ってデータを表現する多変量解析がその道具として用いられるのは、比較的自然なことだと思います。メタボローム解析では特に主成分分析が用いられる事が多く、論文等でその計算結果を目にされたことのある方も多いと思います。

オミクスデータのような高次元データは視覚的に人が理解できないので、何らかの形で視覚化することが有効です。主成分分析は高次元データを1次元に射影し、その上での分散が最大になるような射影方向をいくつか求め、それらの軸を用いて視覚化します。1次元上での分散が大きな主成分軸は、一般的にデータを良く表現する軸であるとしばしば説明されます。しかしこれは少し説明不足です。…

[第1回メタボロミクスと統計解析] オミクスデータの判別

バイオメディカルグループ(統計解析)の山本博之です。

HMTに来て2年目ですが、学生の時からメタボロームデータのための多変量解析手法の開発など、統計解析に関する研究に取り組んできました。膨大なデータが得られるオミクスでは、得られたデータをどのように解析するか、が非常に重要となります。これから1年間、統計解析について、特にメタボロームデータなどのオミクスデータを扱う際に起こりうる、この分野特有の問題点や、統計関連の学会参加報告などを書いていく予定にしていますので、よろしくお願いします。

初回は5月20日~22日に日本計量生物学会の年会に参加し、その様子をご報告する予定だったのですが、残念なことに新型インフルエンザの影響で学会が中止になってしまいました。そこでその代わりと言ってはなんですが、今回はオミクスデータの判別問題について少しご紹介したいと思います。…

絶食後の代謝変化

こんにちは、HMTの大賀拓史です。こちら鶴岡は、お休みのあいだ良い天気に恵まれていました。

日曜日で大型連休も終わり、今日からはまたバリバリお仕事を、という方もたくさんいらっしゃるでしょうか。一方で、体も心もすっかり「お休みモード」になってしまい、なんだか仕事に戻れない...なんて方もいらっしゃるかもしれませんね。

いくら頭では必要だと分かっていても、いきなり全力でというのは、ちょっとしんどいものです。まずは準備体操がてら、ちょっとした作業で気持ちを切り替えたりするのも良いかもしれませんね。

HMTでは上手い具合に、今日はお仕事の前に、定期の社内清掃がありました。休みボケの頭を回し始めるには、ちょうど良い作業量だったようです。

「作業量」を意味する「load」という単語ですが、実験では「負荷」という表現で使われたりします。ある一定の状態に、外部から刺激やストレス、つまり負荷を与えて、それに対する応答を見る、という実験はよく行われますよね。…

発見はいつでも予想外?

こんにちは、HMTの大賀拓史です。

ニュースリリースにも出ていますが、私が担当していた大阪大学・理化学研究所・慶應義塾大学との共同研究の論文が、海外の学術雑誌に掲載されました。一つの業務を達成したことはもちろん、研究者として発見を世に問うことが出来た嬉しさは、感無量の一言に尽きます。研究の概要をご紹介していますので、ぜひニュースリリースもご覧下さい。

今回の研究は、バクテリアが持つ酵素タンパク質の知られざる働きを、オミクス解析を使うことで発見できた!というものです。…

ヨーロッパのメタボロミクス (前編)

こんにちは。バイオメディカルの大橋由明です。

3月末に1週間、ヨーロッパ各地でメタボロミクスを語って参りました。

大手の食品・製薬・分析機器会社・大学を回り、さらにNVMS-BSMS 2009というベネルクス質量分析国際会議(オランダ質量分析学会とベルギー質量分析学会の合同会議)でポスター発表を行いました。スイス、ドイツ、オランダ、フランスの順にヨーロッパ大陸を縦に横にと移動の毎日でしたが、ヨーロッパの研究者がメタボロミクスに寄せる期待を大いに感じる旅となりました。今回のブログでは、会議の報告と、食べ物の話題などを2回に渡ってお伝えします。ちょっと研究の手を休めて、お付き合いください。…

メタボロ太郎なう

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