Metabolite of the Weekでは、みなさまの研究にお役立ていただけますよう、代謝物質の機能や役割について紹介をいたします。
今回はバリン(Valine)について紹介をいたします。
バリン
- バリンはヒトの必須アミノ酸です。ヒトは生合成を行うことができませんが、植物や微生物はピルビン酸からバリンを生合成します。
- バリンは分岐のある脂肪族側鎖を有する分岐鎖アミノ酸(BCAA)のひとつです。他のBCAAとしてはロイシンとイソロイシンが挙げられます。
- バリンを含むBCAAは、筋肉組織の高エネルギー化、持久力増加、再生と回復などに寄与しています。
- バリンの分解は、α-ケトグルタル酸(α-KG、2-オキソグルタル酸、2-OGとも)とのアミノ基転移反応による一級アミノ基の除去から始まります。この反応により、グルタミン酸とα-ケトイソ吉草酸(α-KIV)が生成します。
- いくつかの反応を経て、最終的にバリンはスクシニルCoAに変換され、TCA回路に入ります。そのためバリンは糖原性アミノ酸に分類されます。
- 肥満の人やインスリン抵抗性を有する人、そして2型糖尿病患者では血漿中のBCAA濃度が高くなることが知られており、BCAA濃度は2型糖尿病のバイオマーカー候補としても考えられています。その原因や関係性については現在も研究が進められていますが、インスリン抵抗性の状態ではBCAAの異化作用を担う酵素(BCAT(BCAAアミノ基転移酵素)やBCKD(分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素))の働きに異常が生じていることが示唆されています。
- 2型糖尿病の患者の血漿においてバリンの代謝物である3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIB)が検出されることも報告されており、こうした代謝物についても2型糖尿病リスクのバイオマーカーとなる可能性が考えられます。
- バリンの分解によって、スクシニルCoAではなく(S)-3-アミノ-2-メチルプロピオン酸(L-β-アミノイソ酪酸、L-BAIBAとも)が生成される経路も存在します。異性体である(R)-3-アミノ-2-メチルプロピオン酸(D-BAIBAとも)はチミンの分解産物で、バリンの代謝では生成しません。BAIBAは脂肪細胞や肝臓、筋肉などに作用し、インスリン感受性の向上や脂肪量の低下などに寄与することが示唆されていますが、これらの研究では異性体を区別していないものも多く、今後の研究が期待されます。
おすすめ解析プラン
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