サンプルの種類について
どのようなサンプルの分析が可能ですか?
生体由来のサンプルでしたら、ほとんどのサンプルが分析可能です。
ただし、サンプルの状態やサンプルの前処理の方法によっては分析できない場合もございますので、以下の質問項目もご覧ください。
分析できないサンプルはありますか?
分析が難しいサンプルとして、代謝物質の抽出がうまくいかないもの、抽出した代謝物質の濃度に大きな偏りがあるものが挙げられます。
前者は、粘性が非常に高いものや、種や骨などの硬いサンプルが該当します。ただし、お客様のお手元で破砕や代謝物質の抽出を行っていただく場合には測定可能となる場合がございます。
後者は、海水などの塩濃度が非常に高いものや、また、特定の代謝物質を非常に多く含む飲料などが該当します。そのほか、同一試験の中にpHが大きく異なるサンプルが含まれている場合なども分析が困難になる場合がございます。
これらのサンプルの測定時には希釈を行うため、相対的に濃度の低い他の代謝物質が検出されづらくなり、検出物質数が著しく少なくなってしまう可能性がございます。
界面活性剤や保存液、DMSO溶液などを含む試料は測定できますか?
界面活性剤や保存液を含む試料については、基本的に測定することができません。
DMSO溶液の場合は、DMSOの影響がなくなるまで希釈してからの測定となります。
こうしたサンプルを測定ご希望の際は、事前にお問い合わせください。
注意が必要なサンプル種はありますか?
種類ごとに主な注意点を記載しておりますので、以下の質問で該当するサンプル種の項目をご確認ください。
また、HMTのメールニュース会員限定コンテンツとして更に詳細な検体採取時のポイントや検体送付時のポイント等をご紹介しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
ヒト由来のサンプル
ヒト由来のサンプルについては、ウイルス、微生物等の感染がないことをご確認いただいた上で送付をお願いしております。
感染が疑われる検体、あるいは感染性疾患等の検体の分析を希望される場合には、お客様に除タンパク等の処理を行っていただく必要がございます。
また、試料の疾患情報や匿名性などについての情報提供もお願いしておりますので、ご了承くださいますようお願いいたします。
血液サンプル
全血、血漿、血清、いずれも測定実績はございますが、HMTでは血漿サンプルを推奨しております。
これは、全血ですと血球成分由来の代謝物質の影響を考慮する必要があり、血清ですと静置の時間、環境による代謝物質の変動が考えられるためです。
ただし、先行する実験等で全血や血清を用いられている場合には、条件を変えずに解析されることをお勧めいたします。
また、血漿サンプルの準備の際に用いる抗凝固剤に関しては、EDTAを推奨しております(塩の種類はK,Naどちらでも問題ありませんが、使用される採血管のメーカー・型番はなるべく揃えていただくことをお勧めします)。
ヘパリンは動物由来であるため、精製されているとはいえ完全に代謝物質が取り除かれていない場合もあり、血漿中の代謝物質とヘパリン中の物質が合算された測定結果になることが考えられます。
またクエン酸は、クエン酸自身がCE-MSの測定対象であるとともに、血中で代謝され測定結果に影響を及ぼす可能性があるため、推奨しておりません。
その他の採血管などについてはお問い合わせください。
液体(血液、培地、培養上清等)サンプル
基本的な測定については問題なく行うことが可能ですが、細胞を含まないこうしたサンプルの場合、一般に、グルコース-6-リン酸など細胞外の存在量が少ないと考えられる物質が検出されづらい傾向にあります。
そのため、解糖系を中心としたエネルギー代謝経路の解析を行うシースコープのプランでは検出物質数が少なくなることが予想されますので、お客様の目的に沿ったプランかどうかをよくご検討ください。
ソーティングした細胞(分取した細胞)サンプル
基本的な測定については問題なく行うことが可能ですが、細胞がストレスを受けていることが想定されますので、注意が必要です。
前処理方法としては、ソーティング後にマンニトール洗浄を行い、HMTからご案内する浮遊細胞のプロトコルを参考に抽出作業を行っていただきます。
詳細については事前にお問い合わせください。
3次元培養サンプル
問題なく測定が可能です。ただし、3次元培養の培養条件等によって前処理方法が異なりますので、一度お問い合わせください。
植物サンプル
野菜や果物を含め、植物サンプルは基本的に測定可能です。特定の種類、部位についての測定実績につきましてはお問い合わせください。
植物においては、部位ごとに代謝物質量が大きく異なることも予想されますので、どの部位を試験に用いるか、あるいは含水量等を含めた補正重量の扱いをどうするかといった検討も重要となります。
また、根や種子等、HMTでの破砕が困難なサンプルについては、お客様に代謝物質の抽出をお願いする場合がございます。
発酵調味料、エキス等
基本的に問題なく測定が可能だと考えられますが、塩濃度が高い場合や粘性が高い場合、特定の代謝物質が多量に存在する場合などは、希釈を行う関係で検出物質数が少なくなる可能性がございます。
サンプル量について
必要なサンプル量はどのくらいですか?
必要となるサンプル量は、測定に用いる装置によって異なります。
一例として、CE-MSを用いた解析(ベーシックスキャン、シースコープ等)では下記の必要量となります。
記載の量より少ないサンプル量であっても解析することは可能ですのでご相談ください。
サンプル種 |
備考 |
必要試料量
(水溶性代謝物質解析) |
血液 |
血漿・血清
(全血は別プロトコル) |
120 μL |
尿 |
|
100 μL |
唾液 |
|
240 μL |
皮膚角層 |
テープストリッピング |
1 枚 |
糞便 |
|
30~50 mg |
動物組織 |
肝臓, 脳, 筋肉など
(白色脂肪組織は別プロトコル※1) |
20~40 mg |
培養細胞※2 |
接着細胞、浮遊細胞 |
1.0~5.0×106 cells |
培養細胞
(細胞径が特に小さいもの) |
血球細胞等 |
1.0~5.0×107 cells |
培地・培養上清 |
|
240 μL |
微生物 |
大腸菌など
(直径が1 μm程度のもの) |
20/OD600相当 |
微生物(直径が大きいもの) |
酵母など
(直径が10 μm程度のもの) |
10/OD600相当 |
微生物 |
糸状菌 |
50 mg(湿重量) |
植物組織 |
葉, 茎, 果実など |
20~40 mg |
植物組織 |
乾燥粉末 |
約 100 mg |
食品(液体) |
|
500~1,000 μL |
食品(固体) |
生もの |
20~40 mg |
食品(固体) |
乾燥粉末 |
100~500 mg |
また、解析に供するサンプル量は補正値として用いる重要な値となりますので、必ず正確な秤量、計測の上お知らせいただきますようお願いいたします。
※1 白色脂肪組織の場合、組織内に含まれる脂肪分(水溶性でない部分)が通常の組織に比べて多いため、水溶性代謝物質を測定するCE-MSを用いた解析については200 mgを必要とします。
LC-MS解析の必要量は他の通常の組織と同じです。
※2 HepG2、HEK293など、一般的な大きさの培養細胞では、1.0~5.0×106の細胞数が必要です。
細胞の大きさにより必要細胞数は変化しますので、特殊な細胞を用いられる実験の場合には事前にお問い合わせください。
微生物のサンプル量に記載がある「/OD600」とは何ですか?
「/OD600」は、(OD600の値)× mLを意味します。たとえば「20/OD600」の場合は、サンプルのOD600値が0.5であった場合に40 mL分の、OD600値が2.0であった場合に10 mL分の菌体量が必要となります。
OD600値の計測が困難な場合、湿重量や乾燥重量を秤量してください。目安として、糸状菌などは湿重量で50 mgを必要とします。
必要なサンプル量を集めることが難しいのですが?
ご用意いただける範囲の試料量で解析可能な場合もございますので、お問い合わせください。
また、マウス組織等の場合ですと、複数の個体から回収した上で1検体とみなすという方法が有用な場合もございますので、ご相談ください。
補正値とは何ですか?
HMTのメタボローム解析においては、元のサンプル量によらず一定量の溶液で代謝物質を抽出・測定してから、元のサンプル量を用いて補正計算を行い、単位量あたりの代謝物質量を計算します。
そのため、補正が正確に行えない場合は、見かけ上の代謝物質の量の差がサンプル間の差異に由来するものなのか、あるいはサンプルそのものの量に由来するのかが不明瞭になってしまいます。
特に動植物の組織サンプルや細胞サンプルにつきましては、重量の計測や細胞数の計測など、補正のための値を必ず取っていただくようお願いいたします。
また、水分含有量の差が重量に影響を与える場合もありますので、水分含有量などが大きく異なると考えられるサンプルの場合、前もって凍結乾燥等の実施を推奨する場合がございます。
培養細胞ですと、細胞種によって大きさが異なる場合や薬剤処理によって細胞の大きさが変わってしまう場合などは、細胞数ではなくタンパク質量等での補正が有効となる場合もございます。
サンプルの重量がわからないですが良いですか?
HMTでのサンプルの秤量については、有償でのご対応となります。
凍結サンプルの場合には再融解の危険性もあるため、可能な限りお手元で秤量していただいた上でご送付いただきますようお願いいたします。
弊社での裁断、分注なども有償にて承っております(ただしヒト由来の検体は不可)が、部位の指定等にはお応えできません。
試験デザインについて
サンプルサイズ(n数)はどれくらい必要でしょうか?
HMTの推奨検体数は、1群あたり培養細胞・微生物の場合は1~3程度、飼育動物・栽培植物の場合は3~10程度、臨床検体・野生動植物の場合は20~です。
培養細胞・微生物の場合、細胞集団の不均一性を解消(同調)できるときはn=1でも十分な結果となることがあります。
飼育動物・栽培植物の場合、薬剤応答などを検証する場合はn=3でも有用な結果となりえますが、単純な差分解析の場合はn=5~10が望ましいです。
臨床検体・野生動植物の場合、個人差についてはn=20程度で評価できる可能性があります。症状がはっきりしている場合はn=20程度、群内の不均一性(精神疾患で症状が個々で異なるなど)を考慮するとn=50程度が望ましいと考えられます。ただし、いずれの場合も年齢、性別、BMIなど予測できる限りの交絡因子を排除できるよう無作為割付する必要があります。
なお、どのサンプル種においても、論文投稿の際に査読者からサンプルサイズを指摘される可能性は否定できません。先行研究で用いられているサンプルサイズを参考にすることを推奨いたします。
試験デザインについてお悩みの場合はご相談ください。
複数回にわけて解析を行おうと考えていますが、問題はありますか?
質量分析計(MS)の性質上、代謝物質量は多くのプランで「相対面積値」によるご報告となります。
相対面積値は単位をもたないため、異なる試験系で報告された相対面積値どうしを比較することはできません。
HMTのシースコープなどの定量値をご報告するプランや定量オプションでは、測定前に一定濃度の標品を測定し、その値から検量線を作成して濃度の計算を行うため、データの統合や試験間の比較が可能になると期待されます。
ただし、試料の準備段階における抽出効率の誤差や保存期間中の代謝物質の分解等、試験間での統合が困難になる要因もありますので、注意が必要な場合もございます。
サンプルはどのように保管・送付すれば良いですか?
ご発注後にHMTからサンプル調製方法のご案内をお送りいたしますので、このご案内に従ってサンプリングをお願いいたします。
常温保存・冷蔵保存が可能なサンプル(食品等)についてはその条件で、その他のサンプルは-80℃での保管を推奨しています。
輸送の際、冷凍保存のサンプルは凍結状態が保たれるよう十分量のドライアイスを詰めてお送りください。
冷蔵保存のサンプルの場合は十分量の保冷剤を詰めてお送りください。